活動レポート

サッポロビール・野村證券・ポーラが「がん治療と仕事の両立支援」活動を社会に向けて行う理由/「がんアライアワード2021」パネルディスカッションレポート

サッポロビール・野村證券・ポーラが「がん治療と仕事の両立支援」活動を社会に向けて行う理由/「がんアライアワード2021」パネルディスカッションレポート

2021年11月29日、「がんアライアワード2021」表彰式をオンラインで行いました。

 

その中で行われたパネルディスカッションの内容をご紹介します。登壇者はゴールドを受賞したサッポロビール、野村證券、ポーラの担当者3名。モデレータはがんアライ部発起人の武田雅子が務めました。

 

<プロフィール>

サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 村本さん

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野村證券株式会社 人事戦略部ヘルスサポートグループ長 水野さん

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株式会社ポーラ サスティナビリティ推進室・マネージャー 片岡さん 

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モデレータ:がんアライ部発起人/カルビー株式会社 常務執行役員兼人事総務本部長 武田雅子

ゴールド受賞企業3社のユニークな取り組み

 

武田:本日の登壇者3名は、がんアライ部が「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」を作るにあたって、自社のハンドブックを持ち寄り、その知見を注入してくださいました。まずは自己紹介をお願いできますか?

 

村本:サッポロビールの村本です。長く人事をやっていて、自分自身が頸部食道がんのサバイバーでもあります。2017年以降はサッポロビールのがん治療と就労の両立支援の取り組みについて、サバイバーの視点で関わり、推進しています。

 

水野:野村證券の水野です。人事部に異動したタイミングで健康経営の流れが加速したこともあり、チームメンバーや医療職の皆さんの力をお借りしながら、両立支援の取り組みを進めています。

 

片岡:ポーラの片岡です。私はアワードでシルバーを受賞したencycloの担当者から引き継ぎ、「がん共生プログラム」の活動をしています。今回のゴールド受賞も前任者の功績が大きいですが、本日はよろしくお願いします。

 

武田:まずは皆さんの会社の取り組みについて伺いたいです。特に自社ならではのユニークなものがあれば、ぜひ教えてください。

 

村本:2017年に両立支援ガイドブックを作るところから活動は始まりました。2018年にがんアライ宣言をして、2019年にがん経験者の社内コミュニティ『Can Stars』を発足し、今に至ります。

 

『Can Stars』では、がんを経験した人から参加希望者を募り、相互支援やピアサポートを柱に、社内外への意識啓発の取り組みに力を入れています。メンバーはやる気に満ちていて、充実感を持って活動ができているのか我ながら良いところかなと思っています。

 

武田:『Can Stars』には私も何度かお世話になっていますが、メンバーはとても元気ですよね。そのパワーはどこから来ているんでしょう?

 

村本:ビールを中心にお酒好きな人が多い会社なので、開放的な風土は元々あると思います。コミュニケーションもスムーズな会社ですし、がんに罹患した人は「恩返しをしたい」という気持ちも強いので、それがパワーになっているように思います。

 

水野:当社は2018年にガイドブックを作ったところから活動が始まりました。本人用と管理職用の二種類のガイドブックを作っているのが特徴かなと思います。

 

そうした取り組みを周知させるために、社内で健康に関する動画を作って社員に紹介したり、実際にがんなどの病気でお休みをされた方の経験談をウェブに掲載したりもしています。

 

毎年社員に向けて健康意識調査を行なっているのですが、「病気の治療と仕事を両立できる環境があると思うか」という質問に対して、今年は「そう思う」と回答した社員が前年度比で10%ほど増えていました。結果を実感できて、うれしく思っています。

 

武田:今年のがんアライアワードには野村證券だけではなく、グループ企業からもたくさんのエントリーがありました。どのように横展開していったのでしょうか?

 

水野:当社もそうでしたが、賞をいただくと上層部が応援してくれるようになるので、「まずは応募してみましょう」と声をかけました。気軽に参加できる、懐の広さががんアライ部の良さかなと思います。

 

武田:外堀から埋める方式ですね。続いて、片岡さんお願いします。

 

片岡:2018年にハンドブックを作成し、「がん共生プログラム」がスタートしました。弊社の場合は、従業員と化粧品を販売してくださるビジネスパートナー(業務委託)の双方に向けて、二種類の冊子を作っています。ビジネスパートナーは約3.5万人いて、皆さんに冊子で配布しています。

 

冊子には、顔出しでがん経験を語ってくださった皆さんの体験談が掲載されています。身近な方ががんになって、どういうことがあったのか。それを伝えることで、「がんは意外と身近な病気なんだ」と感じてもらえたかなと思います。

 

武田:雇用契約がないビジネスパートナーにまで範囲を広げて対応しているのが本当にすごいと思います。社内を巻きこむ際のコツはありますか?

 

片岡:社長からのメッセージが非常に強いですね。がん治療と仕事を両立しているビジネスパートナーの方の姿を見て、前社長の横手が感銘を受けたことが取り組みの起点でしたし、現社長も自分の部下にがん罹患者がいたことがあり、身近な病気と捉えています。

 

社内を見渡しても、がんとともに働いている方が結構多いんです。従業員の75%が女性であり、女性は30〜40代でがんになる割合が高いですから、他人事ではないと思う社員も多いのだと思います。

 

自社だけでなく、社会に向けて活動を広げたかった

 

武田:今回のがんアライ部のハンドブック作成に、ご協力いただけた理由を教えてください。背景にはどのような想いがあるのでしょう?

 

片岡:活動をすればするほど、「社内で整備をするだけでいいのか」と疑問を抱くようになりました。がん罹患者本人に対しては会社の制度で守れる部分もありますが、ご家族やパートナーに対する支援はまだまだ足りません。

 

そこに対して何ができるかを考えたときに、がん罹患者のご家族や周りの方々、突き詰めていくと「社会」のがんへの理解が重要なのだと思いました。そのためには、まず社会に対して一歩を踏み出し、活動の輪を広げる必要がある。

 

ただ、具体的に何をすればいいのかが分からない状態で。そんな時にハンドブック作成のお声掛けをいただいたので、ありがたかったですね。社会に対して弊社が協力できる一歩になるのではと思いました。

 

実際に参加したことで先進企業の取り組みを知ることができ、さらに皆さまとディスカッションをしたことで、弊社の取り組みの精度がより上がっていくのが非常に大きいと考えています。

 

水野:これまではがんアライ部の勉強会に参加し、学びを得るばかりだったので、自分たちがお返しできることはないだろうかと思っていました。たまたま弊社はガイドブックを作っていたので、何かお役に立てればという想いでしたね。

 

また、社内で作ったガイドブックを他社に展開する方法を考えてもいたので、その点についてお力を借りたい気持ちもありました。もし弊社だけでガイドブックを公開していたら、きっとそれで終わってしまったと思います。いろいろな企業の皆さまと議論をしたことで気付いたことも多々あったので、とても意義のある機会でした。

 

武田:社内で運営するだけでなく、世の中に向けて展開するという発想になるのが素晴らしいと思います。そういう考え方は、野村證券では珍しいことではないんですか?

 

水野:最近になって「広く世の中のために」という雰囲気が社内にできつつあるように思います。ガイドブックを作った当時も社外へ公開することを考えていましたが、その時は「メリットが分からない」と言われてしまって。社外へのアピールよりも、社内のことを考えるべきだという声も強くありましたね。

 

でも今はSDGsのような社会の流れもあり、企業が社会への貢献を意識するようになりました。そういう中で、外に向けて公開することへの理解も得られるようになってきたように思います。

 

村本:私がハンドブック作成に参加した理由も、お二人と重なるところが多いです。国や社会の流れは、がん治療と就労の両立に確実に向かっています。自社にリソースがあるのであれば、何かしら貢献したい気持ちがありました。

 

他に、恩返しの思いもありましたね。弊社が2017年に自社のガイドブックを作った際、がん罹患者を支援する人事部門と当事者でもある私の間のギャップに加え、他社の視点の必要性を感じる部分があり、アドバイスをいただいたことがあったんです。同じように、自社のリソースをお役立ていただけたらと思いました。

 

あとは弊社のガイドブックもそろそろ見直しの時期だったので、他社さんから刺激をいただいて、より良いものにするための材料を頂戴できればと思ったところもありますね。

 

ゴールド受賞企業のこれからの取り組み

 

武田:最後に、これから取り組みたいことを聞かせてください。

 

村本:私は、サッポロビールに良い循環を作っていきたいと思っています。『Can Stars』の活動のように社内への啓発と同時に社外活動を行うことで、メンバーが「世の中に貢献している」実感を得て、人脈も広がり、それが社内活動のレベルアップにもつながっていく。その循環によって会社への信頼や評判も高まり、ますます良い循環が生まれればと思います。

 

あとはもう一つ、武田さんたちと『WorkCAN’s(ワ―キャンズ)』という活動をしていて、その中で「今生きている喜びを心から実感できる」をコンセプトにしたビールを作ろうとしています。来年の夏には発売できそうなので、これをぜひ実現したいです。

 

片岡:がん罹患者と、その人たちを支える方に向けて、エステや化粧品のショップにお迎えするにあたり、接客力を向上させるウェビナーを実施しました。『フレンドリーアクション』と名付けていますが、このテキストは弊社のホームページで公開したいと思っています。ハンドブックと同じように、皆さんにご覧いただいて、他社で活用できそうな部分はヒントとしてぜひ使っていただきたいです。

 

がんは特別なものではなく、多様性の一つ。今後もがん罹患者の皆さんの可能性を広げる社会づくりに向けて、ぜひ皆さんのお力をお借りしながら、一緒に活動をしていきたいと思っています。

 

水野:両立支援の風土はできてきましたが、社員のリテラシーはまだまだです。最近は子どもに対してがん教育をする世の中になってきましたので、少なくとも子どもたちが知っていることは大人も知っている状態にしたいですね。

 

あとは、弊社は全国に社員が所在していますので、がんサバイバーの方たちがつながれる場所づくりを考えていきたいです。

 

がんアライ部のお力を借りてここまで来れたという気持ちが私たち3人にはありますので、参加者の皆さんも、小さなことでもいいので「何か始めてみよう」という気持ちで勉強会などに参加いただけるといいのかなと思います。

 

>>「がんアライアワード 2021」受賞企業と事例集はこちら

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