活動レポート

野村證券・富士通ゼネラル・狭山ケーブルテレビ担当者が語る「人事が社内に変化を起こすために必要なこと」/「がんアライアワード2020」パネルディスカッションレポート - がんアライ部

野村證券・富士通ゼネラル・狭山ケーブルテレビ担当者が語る「人事が社内に変化を起こすために必要なこと」/「がんアライアワード2020」パネルディスカッションレポート - がんアライ部

12月2日、「がんアライアワード2020」表彰式をオンラインで開催しました。当日は受賞企業30社の中から、ゴールドを受賞した花王株式会社と、シルバーを受賞した株式会社iCAREが代表講演を実施。

 

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その後は、がんアライ部発起人の武田雅子がモデレータを務め、ゴールドを受賞した野村證券株式会社、株式会社富士通ゼネラル、シルバーを受賞した狭山ケーブルテレビ株式会社の担当者3名にご登壇いただき、「人事が社内に変化を起こすために必要なこと」と題したパネルディスカッションが行われました。

 

本記事ではその様子をご紹介します。

 

<プロフィール>

野村證券株式会社 人事業務部厚生課ヘルスサポートグループ長 水野さん

株式会社富士通ゼネラル サスティナビリティ本部健康経営推進部 部長兼 人事統括部 主席部長 佐藤さん

狭山ケーブルテレビ株式会社 総務課課長 村田さん

モデレータ:がんアライ部発起人/カルビー株式会社 常務執行役員人事総務本部長 武田雅子

 

>>【がんアライアワード2020 ゴールド】野村證券株式会社の「がんと就労」施策 

>>【がんアライアワード2020 ゴールド】株式会社富士通ゼネラルの「がんと就労」施策

>>【がんアライアワード2020 シルバー】狭山ケーブルテレビ株式会社の「がんと就労」施策

3社が「がんと仕事の両立支援」を始めたきっかけ

 

武田:まずは、皆さんの会社でがんと仕事の両立支援の取り組みを始めたきっかけを教えてください。

 

村田:私自身が乳がんのサバイバーで、6年前にステージ3の診断を受けました。抗がん剤治療や全摘出手術、放射線手術を経て、昨年再発が分かって緩和ケアを開始したところです。

 

入社当時は何の制度もなかったですし、「がんに罹患しているのに仕事をするだなんて」という声もあったんですけど、私自身ががんでも働ける姿を見せることで、社会のイメージを少しずつ変えていきたいと思っています。

 

佐藤:3年前に「健康経営をやろう」と社長が言い始めたのがきっかけです。その中の一つとして、がんと就労という観点では幹部社員に向けた教育を行ってきました。そこから少しずつ一般社員にも波及していった感じです。

 

ものづくりの会社は「がんでも働ける」という認知が足りないところがありますので、徐々に企業風土を変えながら、がん罹患者にどのような声かけができるのか、練習を始めています。今は少しは根付いてきたという状態です。

 

水野:働く世代でがんに罹患する人が増えている中、身近にもそういう方がいらっしゃって「何かしなければ」と思ったのが、当社の取り組みの原点です。とはいえどうしていいか分からずにいたところ、育児休業中に公衆衛生大学院で勉強をした保健師が、復職の際に企画書を持ってきてくれたんです。

 

がん罹患経験のある働く世代の方たちに関する研究をしたそうで、彼女の企画書からいろいろな課題があることが見えてきました。本人や上司だけが頑張っても無理で、職場の環境も必要になる。そういった背景から「両立支援ガイドブックを作りたい」と提案を受けて、そこから一つ一つ始めて今に至っています。

 

周りの人を巻き込む「最初の一歩」とは

 

武田:最初の一歩は特にハードルが高いと思います。どうやって周りを巻き込んでいけばいいのか、アドバイスをいただけますか?

 

佐藤:当社はまず、「社員が安心して働ける環境をいかにつくるか」を考え、保健師さんや産業医の先生、健康管理室と共に1〜2年かけて環境づくりに取り組んできました。その一つが、健康管理室に行きやすい環境づくりです。

 

私が以前、勤務していた本社は5000人の従業員がいて、健康管理室があるんですけど、若い社員は行ったことないんですよね。当社の場合は1500人規模ですから、今は全員と面談を設定して、健康上の問題が何もなくても健康管理室に来る機会をつくっています。1年半かけて、今は2回転目に入ったところですね。

 

村田:当社は40名ほどの会社ですので、一人一人に課せられてる仕事が多い状況です。そんな中でも、育児や介護、病気と仕事を両立するなど、いろいろなバックボーンを持った人間が集まって仕事をしている。まずはそれをみんなに理解してもらう必要がありました。

 

当社は埼玉県の「多様な働き方実践企業」に認定いただいているんですけど、そういうさまざまな事情を持つ人たちと一緒にやっていく姿勢を、共感と共に持ってもらえるように声掛けをして、認知を広めていきました。

 

武田:規模が小さい、顔が見える距離の会社ならではのアプローチですね。

 

水野:当社の場合は、がんに限らず、仕事と治療の両立に関する体験をシェアしてくれる方を募集して、社員の体験談をイントラサイトに載せています。「どういう思いをしたのか」「仕事があることがどんな力になっているのか」を書いてくれる方、細かい制度を紹介してくれる方など、内容はさまざま。今は約10人の体験談を掲載していますが、そこから取り組みが広がっていったように思います。

 

掲載時は匿名・顔出しなしでもOKとしているのですが、最近は顔と名前を出してくれる方が自然と増えてきました。少しずつオープンにしやすい土壌ができてきたのかもしれません。

 

コロナ禍ならではの気づきや、新たに行った対応

 

武田:今年は新型コロナウイルスに振り回された1年でした。こういった活動をする中で、コロナ禍ならではの気づきや、新たに行った対応はありましたか?

 

村田:みんなで共生社会をつくっていこうと考える動きにつながったように思いますね。「人にうつさないようにマスクや手洗いを徹底しましょう」というアナウンスがされたことで、「自分だけが良ければいいのではなく、周りの人も安心して過ごせる社会をつくる」意識が芽生えたのはすごく良い影響だったと感じています。

 

水野:これは反省点ですが、治療中で免疫力が落ちている方もいる中で、会社として具体的な発信や支援をタイムリーにはできませんでした。今後の課題として、同じようなことが起きたときの対応の仕方は考えていかなければいけないと思っています。

 

佐藤:いろいろな企業が制度や体制が整っていない中、無理やり在宅勤務をやりました。だからこその混乱もあったわけですが、当社では、がんに対する管理職の意識が高くなったことで、「がん罹患者へのリスクを考えて基本的には在宅にする」という産業医の先生の判断がスムーズに下りました。

 

そういう意味で今回のコロナ禍への対応は、これまでに健康に関する教育を行ったり、トップのメッセージを発信したりしたことによって、従業員の意識が変わってきた証拠だと受け止めています。

 

「やっててよかった」と感じる効果

 

武田:だんだん協力者が増えていくと、「この先どうするんだっけ?」という議論が起こると思います。「どういうリターンがあるのか」「なぜがんだけなのか」といった意見が出ることもありますが、皆さんは「やっててよかった」と感じる効果についてどう感じていますか?

 

佐藤:「がんは特別なことじゃない」という理解が浸透してきたのを感じています。野村證券さんのように体験談をイントラでシェアするところまではいかないですけど、自身のがん体験をワークショップで発言するような素地は少しずつできてきたように思っています。

 

村田:私自身はプライベートの活動として、地域のコミュニティチャンネルに出ています。先日は自治会長さんに「テレビ見たよ。元気そうでよかった」と声をかけていただき、社内だけではなく、地域の方にも「がんになっても元気に仕事をしてる姿」を見ていただけました。これも一つの社会貢献になっているんじゃないかと思っています。

 

武田:企業のイメージアップにも絶対つながっていますよね。水野さんはどうでしょう?

 

水野:両立支援ガイドブックを見て上司に連絡する人がいたり、実名で体験談を寄せてくれる人が出てきたり、今回のがんアライ宣言の写真も社内イントラや衛生委員会で声をかけたら一緒に出てくれたりと、じわじわと取り組みが広がっているのを感じています。

 

 

水野:また、当社では年に一回、社員に対して健康に対する調査をしているのですが、「病気でも働ける風土があると思うか」という質問に対して、56%の方が「そう思う」と答えてくれました。昨年より10%増えていて、励みになっています。

 

気楽な一歩を踏み出して、取り組みがどんどん広がっていくといい

 

武田:今後はどのような取り組みをしたいですか?

 

水野:体験談を載せて終わりではなく、情報共有ができる場を用意したいと思っています。あとは両立支援ガイドブックについて、現状は社内でしか使えていないのですが、例えば雛形を用意して、がんアライ部に参加している企業の皆さんに展開できたらいいのかなとイメージしています。皆さんと中身を見ながら、より良いものにして提供できたらいいよねと、社内の保健師とも話しています。

 

武田:これは参加してる皆さんにとってうれしい情報ですね。期待しています!

 

村田:以前、セミナーに一緒に登壇した朝日航洋の方が「私傷病と仕事の両立支援ハンドブック」を作っていらっしゃって。その冊子の内容が、罹患者の一人としてすばらしい内容だったんです。実際に病気に罹患した方が社内で活動をする時に、周りからどういうサポートが得られたのか、事例として記載がされているのがすごくいいなと。それを参考に、当社もガイドブック作成の準備を進めているところです。

 

佐藤:コロナによってオンラインでの講演がしやすくなったので、ご家族の方を巻き込んで情報提供ができるようにしたいですね。将来的には地域も巻き込んで、そんなことをやれたらいいなと思っています。

 

武田:最後に、がんアライ部部員の皆さんへのエールをお願いします。

 

水野:部活ということで、気楽に参加できるのががんアライ部のいいところだと思います。当社も気楽な一歩から始めて、ここまでちょっとずつですけどやれています。ぜひ一緒に進んでいけたらなと思います。

 

村田:働く意思を持った人がいきいきと活躍できる場を供給し続けることが、企業に求められていることだと思います。この活動を通じて学ばせてもらいながら、共生社会を一緒につくっていきたいですね。今後ともよろしくお願いします。

 

佐藤:部員として気楽に参加して、仲間を増やして、皆さんの取り組みがどんどん広がっていくといいですよね。固定観念みたいなものをなくして、みんなの笑顔が溢れるように、当社もその一員として一緒に活動していきたいです。

 

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