活動レポート

伊藤忠商事・ガデリウス・JALのがん対策を一挙公開!がんアライ宣言・アワード・ゴールド受賞企業3社の代表講演レポート - がんアライ部

伊藤忠商事・ガデリウス・JALのがん対策を一挙公開!がんアライ宣言・アワード・ゴールド受賞企業3社の代表講演レポート - がんアライ部

10月2日、第1回がんアライ宣言・アワード表彰式を開催。受賞企業21社の中から、ゴールドに輝いた3社が代表講演を行いました。各社はどのようながんと就労の両立支援を実施しているのでしょうか?その内容をレポートします。

 

登壇者

  • 伊藤忠商事株式会社 人事・総務部企画統轄室長 西川大輔さん
  • ガデリウス・ホールディング株式会社 総務本部 人財開発部課長 山下智子さん
  • 日本航空株式会社 人財本部担当役員 小田卓也さん

伊藤忠商事「がんになった社員を皆で支えることが組織全体の団結力を高める」

 

伊藤忠商事のがんとの両立支援施策は、当時闘病中だった社員から社長に送った一通のメールがきっかけでした。ある調査の「幸せな会社ランキング」で同社が2位になった時、その社員が会社や同僚からの支えに感謝するとともに、「わたしにとっては日本で一番いい会社です」というメッセージを送ったことが、今の手厚い施策につながっています。「社員をがんにさせない」「がんになっても絶望させない、辞めさせない」「皆で支える」という考えから、両立支援の方針は大きく次の3つに分かれます。

 

  • 安心して相談・情報共有ができる環境整備
  • 予防・早期発見・治療をサポートする体制強化
  • 治療をしながら働き続け、活躍できる社内体制・制度の整備

 

具体的には、「予防」「治療」「共生」の3つの施策が用意されています。

 

「まず予防では、国立がん研究センターと提携し、社員全員が定期的に特別がん検診を受診。専門的な知見を持った病院で検査をすることにより、早期発見につなげています。治療のフォローについては、がんが見つかった場合に国立がん研究センターの専門医へ即時連携・治療する体制や、保険が適用されないがん先進医療費を会社が負担することで、経済的な不安を軽減できればと考えています」

 

 

そして復職の際には、がんに罹患した社員が安心して仕事ができるよう、両立支援をするためのチームが作られます。人事担当者は両立支援コーディネーターを兼任し、産業医や社内のカウンセラー、本人の所属長とチームを組んで支援を行なっています。

 

 

 

「両立支援プランを記入するシートを元に、治療方法や経過、仕事の状況を確認しながらチームで動きます。2018年度からは、仕事と同じスピリットで闘病に臨んで欲しいという観点より、がん治療と仕事との“両立度”を個人業績評価へ反映することとしました。両立支援プランをベースに、上司と相談の上で立ち向かう決意や仕事とどう両立していくかを個人のMBO目標として設定してもらい、賞与にも反映される仕組みです」

 

▲伊藤忠商事株式会社 人事・総務部企画統轄室長 西川大輔さん 

 

他にも、万が一、罹患社員が亡くなられた際にその社員に子どもがいる場合は、私立水準での大学院卒業までの育英資金を全額会社が負担するなど、将来への不安を軽減するための仕組みを整備しています。

 

「直近ではがんに罹患した社員を支え合う風土を作るために、がんの知識を深めるためのワークショップやセミナーを行なっています。がんになった社員の不安な気持ちや悩みを理解し、支えることで少しでもその負担を軽減する。そんな動きを皆が自然体で行うことが、結果的に組織全体の団結力を高めると思っています」

 

>>伊藤忠商事のがんアライ宣言・アワード応募レポートはこちら

 

 

ガデリウス・ホールディング「治療費100万円を支給する『がん基金』や有休の寄付制度で支える」

 

ガデリウスグループは、産業機器や省エネ建材、医療機械の輸入・販売を手がける、スウェーデンをルーツに持つ外資系企業です。同社が掲げる企業理念は次の通り。

 

“To be a great employer, providing a challenging, rewarding and healthy working life for our employees.”

「従業員一人ひとりの心身の健康を第一に考え、働きやすい職場環境を提供します。」

 

2週間連続での夏季休暇取得の推進、男性の育児休暇の義務化など、フレキシブルな働き方が世界から注目を集めるスウェーデンらしい人事制度を整備。オフィスにインストラクターを招いてのヨガ、立って会議を行うスタンドアップミーティングなど、健康経営にも力を入れています。そんな同社のがんアライ宣言はこちら。

 

「がん基金+休暇のサポート(寄付)など、みんなで支え合いながら、ひとりひとりのライフステージに合った働きやすい環境づくりをめざします」

 

『がん基金』とは、がんと診断された社員に治療費として100万円を支給する制度。2017年にスタートして以来、7名が対象になっています。

 

「2016年に、がんで亡くなった社員がいました。そのことがきっかけで、がん治療には莫大な費用がかかることを知り、そうして生まれたのが『がん基金』です。また、治療しながら働くには働く時間、仕事内容を見直す必要がありますので、時短勤務やフレックス制度、在宅勤務など、治療の進捗や体調に合わせた働き方を随時設定しています。そして必要に応じて、ご家族との面談を実施。会社が全面的にサポートしているとお伝えすることで、安心して治療をしていただければと思っています」

 

▲ガデリウス・ホールディング株式会社 総務本部 人財開発部課長 山下智子さん

 

さらに現在は新たな休暇寄付制度を整備中。他の社員の未使用の有給休暇を、がん治療のために休暇が必要な社員に寄付できる仕組みです。

 

「がん治療のために有給休暇を全て使用してしまったとしても、他の社員から有休寄付を受けることによって、給与が保証された状態で治療を続けられます。年末までに運用スタートできるように、今は最終調整中。今後も社員一人一人のライフステージに合った働き方を提供し、社員とともに成長し続ける企業であり続けたいと思っています」

 

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日本航空「経営破綻をきっかけに『全社員の物心両面の幸福』を見直した」

 

JALグループの社員数は約3万3,000人。飛行機は24時間365日運航しているため、深夜業を含むシフト勤務者が全体の約8割を占めます。同社が健康経営に取り組むようになったきっかけは、経営破綻でした。

 

「経営を見直すにあたり、経営理念を次のように作り直しました。社員が幸福でなければお客さまに良いサービスは提供できないということで、『全社員の物心両面の幸福』が前提にあります」

 

JALグループは全社員の物心両面の幸福を追求し、

一、お客さまに最高のサービスを提供します。

一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

 

「この経営理念には、当時大きな反発がありました。経営破綻で多くの人に迷惑をかけている会社が、なぜ社員ファーストなのか。このような声に、『社員が生き生きとしていないのに、最高のサービスなんか提供できるわけがない』と当時の会長である稲盛和夫が話し、2012年に中期経営計画と連動したJALグループ健康推進施策『JALウエルネス2016』を策定することになりました」

 

現在は健康推進施策の第2弾として、『JAL Wellness2020』という小冊子を全社員に配布し、啓蒙活動を実施。当初の三本柱であった生活習慣病、がん、メンタルヘルスに、新たな目標として女性の健康とたばこ対策を加えた5つを重点施策としています。

 

▲日本航空株式会社 人財本部担当役員 小田卓也さん

 

「女性の健康の面では、『Women’s Health Guide』と言う冊子を全女性社員に配りました。20〜30代の若い世代の中には、自分に病気は関係ないと思っている人もいます。婦人科検診に行かない人も少なくないですから、乳がんをはじめとした婦人科系疾病の正しい知識を伝えるなどの啓蒙を開始しています」

 

また、こうした健康への取り組みを、トップダウンとボトムアップで実施。もともと職場単位で『ウェルネスリーダー』という健康に関する施策を行うリーダーを置いていましたが、2017年からは副社長が「CWO(Chief Wellness Officer=健康経営責任者)」に就任。経営として健康経営に取り組む姿勢を明らかにしました。

 

がん治療と就労の両立支援については、「柔軟な働き方」と「医療職によるサポート体制」の大きく2つの施策を行なっています。

 

「柔軟な働き方については、がんの社員に限らず、さまざまな制約のある社員がどうしたら働き続けられるのかという視点を重視しています。そのために、フレックス勤務制度や在宅勤務制度など、時間と場所に縛られない働き方を推進しています。2014年に始めた当時は対象者の条件が細かく決まっていましたが、社員の声を聞きながら徐々に条件を緩めていって今の形になりました。例えばテレワークの人数は2014年にはたったの50人でしたが、2017年は約1万3000人にまで増えました」

 

 

復職の際には医療職によるサポート体制を整備し、主治医だけでなく、産業医も復職可能か否かを判断しています。その上で、産業医がそれぞれの仕事や体調に応じた「復帰支援プログラム」を作成

 

「過去5年間、がんに罹患した社員は223人いますが、その内196人が今でも元気に働いています。がん治療と就労の両立が困難であるという理由で退職した社員はゼロです。社員が安心して働ける環境を整えた結果、社員満足度も向上しています」

 

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「がんアライ宣言」受付中です!

 

2018年のアワード募集は終了しましたが、「がんアライ宣言」はいつでも受付中です!

 

「がんアライ宣言」とは、がんとともに働き続けられる環境をつくるために、各企業で取り組むことを宣言するもの。宣言をするのは、社長でも、人事担当者でも、ダイバーシティ担当者でも構いません。「がんにかかわる取り組みを推進していく人」であれば、役割や肩書きも問いません。

 

宣言の方法は、がんアライ宣言の様式をダウンロードし、宣言を記入し、印刷した宣言を持って写真を撮って事務局宛にメールで送るだけ。すでに取り組みを開始している企業はもちろん、「これから取り組むぞ!」という決意表明も大歓迎です!

 

がんアライ宣言の様式のダウンロードはこちら

宛先:gan-ally-bu@lifenet-seimei.co.jp

 

 

取材・文:天野夏海

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