活動レポート

ミスが目立つときはどう対応すべき? がん治療中の社員を支えるために、最も大切なこと【第1回勉強会レポート】

ミスが目立つときはどう対応すべき? がん治療中の社員を支えるために、最も大切なこと【第1回勉強会レポート】

10月6日に実施した人事の方向けの第1回勉強会の最後に、これまでの勉強会の内容を踏まえたパネルディスカッションを行いました。

 

登壇者はがんアライ部の発起人である、ライフネット生命保険株式会社の岩瀬大輔、キャンサー・ソリューションズ株式会社の桜井なおみ、株式会社クレディセゾンの武田雅子、一般社団法人キャンサーペアレンツの西口洋平の4名と、多数の企業の産業医を務め、がん治療と就労の両立支援の研究を10年以上続けている遠藤源樹先生の計5名。最後には人事の方からの質問も上がりました。その模様をご紹介します。

 

>株式会社クレディセゾン、武田雅子の勉強会レポート「がんと就労の問題をクリアすることが、働き方改革につながる」クレディセゾンの仕事と治療の両立支援施策

 

>>キャンサー・ソリューションズ株式会社、桜井なおみの勉強会レポート“がん体験者によるがん体験者のための会社”の代表が語る、離職の背景要因と会社に必要な配慮

 

 

 

「体調や病気のことを聞いてはいけない」は間違い

 

 

桜井: 大人は、周囲の人に助けを求めたり、ちょっとしたことを頼んだりといったことがすごく苦手です。自分で頑張っちゃって、失敗すると「自分のせいだ」「迷惑をかけてしまった」と責めてしまう。こういうことを防ぐために、人事としてはどのようなことをしていますか?

 

武田:本人と話をして、「できる」「できない」を切り分けて整理します。人事側だけで考えてしまいがちですが、これが正解っていうものはないし、結局聞かないとわからないんですよ。また、時間が経つと変わっていくので、「状況が変わったらいつでも言ってね」と伝え、定期的にこちらからも声がけをしています。

 

桜井:企業に調査をした時に、上司や部下にがんの患者さんがいる人といない人で、一番回答が分かれたのがまさにコミュニケーションの部分でした。がんの患者さんと一緒に働いたことがない人たちは、体調や病気のことは一切聞いてはいけないと思っている。でも、働いたことがある人たちはそうじゃない。話を聞いて一緒に考えていくこと。コミュニケーションを密に取ることがとても重要です。

 

遠藤:がんに罹患した方々は「今まで休んでいた分、頑張ろう」と、無理しているところがある。それを自分から上司に言いにくいなど、会社の中には利害関係がありますが、産業医がいる会社であれば、「これは上司に伝えた方が会社にとっていいな」といったところを、産業医を介することで、利害関係を調整することが容易になります。産業医をうまく使えるといいですよね。

 

 

 

 

病状をどこまでオープンにすべきか

 

 

岩瀬:コミュニケーションの話でいうと、がんになった方が社内報で自分の病状を随時アップデートしてシェアしたという、他社のベストプラクティス事例みたいなものが、すごくいいなと思ったんです。状況が刻々と変わる中で、一部の人しか知らないよりも、誰もが知っている方がみんなで支え合える部分もある。一方で「言いたくない」という気持ちもあると思うんですが、本当は関わる方々の情報レベルがそろっている方が、助けられる気がするんです。実務的にはどうするのがよいのでしょうか。

 

遠藤:本人が理解してほしいというのであれば、耳を傾けるべきだと思います。ただ難しいのが、興味本位で聞く人がいるのも事実です。それに会社の中ではがんで休んでいる社員の方の噂もいろいろ出てきます。企業の中を見ていると情報が守られているところが少なくて、例えば上司に言ったことがみんなに筒抜けになっていて、飲み屋で「あの人は、がんのステージが4らしいよ」と、一番センシティヴな健康情報がもれているケースが少なくありません。これからは、がんに限らず、社員の健康情報をしっかり守っていくことが求められると思います。

 

桜井:それはカミングアウトするときの信頼関係の部分で、どこまで情報を伝えるかというのも、やはり話し合いだと思うんです。社内だけでなく、クライアントや支社の人はどうすべきかなど、距離感の問題もあります。そこも含めて話し合いをするのが、すごく大事なことです。

 

武田: 「どこまで言うのか」というのは、一番多く相談を受けます。本当に人それぞれで、正解はありませんが、私自身ががんの治療をしていた当時、配慮がほしい時は、それを求める相手には病状を伝えていました。配慮を引き出すために、関わる人にはある程度の情報提供をしておく。その他の人には、無理に言う必要はありません。さらに言うと、無理にがんであることを言う必要はなくて、「病気の治療をしていて、副作用でこんな事があるので配慮がほしい」という伝え方でもいいと思うんです。がんってすごく強い言葉で、相手がフリーズしちゃうので。

 

桜井:カミングアウトをして、どういう風に働きたいのかを伝えなければ、配慮が得られません。それに、万が一のことがあった時、上司や同僚の方に「自分が負担をかけ過ぎたから病気が悪化したんじゃないか」と思わせるようなことになってしまっては、あまりにも悲しい。本人から職場の人へのカミングアウトは、非常に重要だと思います。

 

 

「お互い様だから」の風土はどうやって作る?

 

 

岩瀬:これまでのお話を聞いていて、一番難しいと思ったのが、「『お互い様』の風土づくり」です。どうやったらそういう風土はできるのでしょうか?

 

武田:クレディセゾンの場合は、「何かをしてあげる」ではなく、「もしかしたら今後自分もこうなるかもしれない」というように、全体を俯瞰したような感じで考えています。「その人=がん」なのではなく、たまたまその人がその期間、がんというちょっと重たい荷物を持っている。じゃあその重たい荷物をチームで持ちながら、どういう風にゴールに向かうのか。「みんなで学ぼうよ」というスタンスでいると、本人もちゃんと教えてあげようという意識になります。

 

岩瀬: 自分の経験が他の社員のためになる状態をつくるわけですね。

 

西口:「患者」という表現を考えることも大事かなと思っています。患者って言われると、どうしても患者になっちゃうんですよね。見ている側も患者っていう意識になっちゃいますし。言い方を変えるなど、そういう表現の部分からも変えていけるんじゃないかと思います。

 

桜井:「患者の西口さん」になっちゃうんですよね。

 

西口:あだ名でもなんでもいいと思うんですけど、何か呼び名を考えたいですね。

 

 

 

 

 

ミスが目立つがん治療中の社員に、するべき配慮とは?

 

 

岩瀬:人事の皆さんで、質問がある方はいますか?

 

人事担当者:がん治療中の社員に仕事をしてもらっているのですが、本人はすごくやる気があるものの、ミスが目立ちます。疲れているんじゃないかと思って本人と話をしても、「大丈夫です」と言われてしまうのですが、こういうときにどのような配慮をしたらいいのでしょうか?

 

武田:まずは主治医や産業医の先生に、復職直後と今の状態で変化があるかどうかを確認します。あとは、本人に仕事の評価をきちんとフィードバックしてあげてください。これは健康な社員の方に行うのと全く同じで、作業が遅れている原因や足りない部分を、一緒に考えてあげること。「ケアハラ」という言い方をしますが、「疲れているんじゃないか」といった周囲の想像は、あまりいらないんですよね。医療的な部分と、マネジメントとしてやるべき部分。本人とコミュニケーションを取りながら、この2方向で状況をチェックしていくのが大切です。

 

西口:本人も感情的になってしまうんですよね。治療だけでも疎外感を受けてしまっているので、職場でもうまくいかないとなると、余計に「今の仕事を守らなきゃいけない」という意識が出てしまう。

 

遠藤:企業のメンタルヘルス対策を担当している方はご存知だと思いますが、治療と就労の両立支援において重要なものの一つに、『事例性と疾病性を分けた対応』があります。

 

『事例性』とは、通常の業務を遂行する上で支障となるような客観的な事実のことで、例えば、「仕事のミスが増えてきた」「今月は突発休を4日認めた」「短時間勤務をさせている」「1日10回ほど、トイレのために離席する」などを指します。

 

一方で『疾病性』とは、病気や症状などの医学的な内容を指します。会社が社員に対応する際、基本的に『事例性をベースに対応していくべき』であり、該当社員の管理職は人事部長や役員等と情報共有を進めて、仕事や職場への影響がないように(事例性を無くすように)配置転換を行う(立ち作業から座り作業への変更等)ことで、対応していくことがベターです。

 

『疾病性』については、主治医や産業医等に『ボールを投げる』、つまり、医療職の意見を聴いて(時には診断書や照会状等)、『ボールを返してもらって』、対応を検討していけばよいのです。この『事例性』と『疾病性』を整理して対応していけば、がん治療と就労の両立支援はそれほど難しくないのです。

 

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がん治療中の社員を支える上で、人事担当者や上司が気になる具体的な例が多く上がりましたが、配慮の仕方はケースや本人の状況によって変わるものの、全てのベースにあるのは、コミュニケーション。

人事や上司とがん治療中の社員が話し合いをすることの重要性が見えてきました。

まだまだ課題が多いがんと就労の問題ですが、とにかくこまめにコミュニケーションを取ることが、がん罹患者の方が仕事を継続できる社会への第一歩となりそうです。

 

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