活動レポート

「がんと就労の問題をクリアすることが、働き方改革につながる」クレディセゾンの仕事と治療の両立支援施策【第1回勉強会レポート】 - がんアライ部

「がんと就労の問題をクリアすることが、働き方改革につながる」クレディセゾンの仕事と治療の両立支援施策【第1回勉強会レポート】 - がんアライ部

106日、41社、50名の人事の方々にお集まりいただき、第1回目の勉強会を行いました。講師を務めたのは、がんアライ部の発起人である株式会社クレディセゾン取締役営業推進事業部長、戦略人事部キャリア開発室長の武田雅子と、キャンサー・ソリューションズ株式会社代表の桜井なおみの2名。

ここでは「株式会社クレディセゾンにおける 仕事と治療の両立支援施策について」と題した、武田の講演内容の一部をご紹介します。

 

 

 

全員活躍の定義とは?

 

がんと就労のテーマにいち早く取り組んでいるクレディセゾン。人事を務める武田自身が13年前にがんを罹患していますが、同社が取り組みを始めたきっかけは、メンタルヘルスの問題でした。

 

「制度や就業規則を見直して常駐の産業医の先生を採用し、体制を強化していく中で、がんを始めとした疾病対象にも使えるのではと、運用の種類を増やすのではなく対象を広げました。休職している社員全体に向けて復職の際の短時間勤務を用意し、職場と人事と産業医の連携の仕方を検討し、運用を整備。全階層に研修を行い、今でも新人のマネジャーには研修を受けてもらっています」

 

 ダイバーシティという言葉があちこちで聞かれるようになり、全員活躍が叫ばれる昨今。さまざまな事情を抱える社員全員がイキイキと働けるような環境を作りたいというのは、多くの会社の切実な望みでもあります。

 

その際にまず考えなければいけないのが、「全員活躍の定義」と武田は話します。

 

 

 

「背の低い人、中くらいの人、高い人が3人で野球観戦をしているとします。前には塀があって、背が高い人以外は試合の様子がよく見えません。3人に同じように一つずつ木箱を用意するのは、確かに平等ではあるけれど、全員が野球を見ることにはならない。

 

つまり、みんなに平等に制度を用意するだけでは不十分なんです。背が中くらいの人には木箱を1つ、低い人には2つ与えることで、すべての人たちにチャンスが与えられている状態。これが私たちの目指す全員活躍です。

 

ところが現実の組織では、ハイパフォーマーばかりを優遇するような光景もまだまだ見られます。『全員活躍している状態』が共有されれば、マネジャーも木箱をどのように与えるのかに意識が向くのではないでしょうか」

 

 

クレディセゾンのサポート体制

 

関わる人や部署など、それぞれの役割を切り離すのが同社のサポート体制のポイントです。

 

 

「復職後も定期的に産業医の先生や保健師の方が面談をして、医療面で対象者のサポートをします。その際に上司がマネジメントをする上で、情報があった方がうまくいくと判断した場合は、本人の了承を取った上で情報を伝えます。

一方の人事部としては、上司の方が組織としてのゴールを達成できるのか注目。職場全体の運営がうまくいっているのか、全体のマネジメントがうまくいっているのか。そういった点に主眼を置いて活動をしています」

 

 

同社のサポート制度例

 

●休職者マニュアル

 

→産業医や人事との手続きや制度の説明だけでなく、高額医療費の申請をするかどうか、休職中にマイナス給与になった時にどうすべきかといった、休職中の不安を解消するための情報も記載。

他に復職前のチェックリストなどが用意され、がんに限らず、休職者全般に使えるマニュアルになっている。

 

 

●就業可能診断書のフォーマット

 

→会社の制度やルールに加え、会社としてどのような配慮ができるのかを記載することで、休職者の主治医との目線合わせがスムーズに。

 

 

●休職してから復職するまでの流れをまとめた資料

 

→ポイントごとに、どの組織にどのような手続きをすればいいのかを時系列で明記。イントラネットと連携することで、申請書や記入例などが調べやすくなっている。人事への問い合わせの削減にも効果的。

 

上記のような制度を紹介しながらも、最も効果的なのは「実績を見せること」と武田は続けます。

 

「弊社には私の他にも、治療をしながら働く、復職後も役職について仕事をする、という姿を見せてくれているがんに罹患した社員が何人もいます。制度を変えました、がんになっても大丈夫、というメッセージよりも、がんになっても普通に元気に働いている姿を見せることが、何よりのメッセージになります」

 

 

がん治療と就労のテーマにエキスパートはいない

 

「人事が会社としてやれる事は、制度を用意し、運用を整備するところまで」と武田。がんに限らず、サポートが必要な社員の状況はさまざま。だからこそ、その職場の責任者が自分の裁量で判断をすることが重要です。

 

「その職場、部署の新しいルールを責任者の方が決めるということは、コミットしているということです。対象者の身近なところにいる社員からのちょっとした配慮と制度が組み合わさることで、サポートの仕方も変わります。つまり、完璧な制度なんてない。制度を決め過ぎずに、余地を残しておくことが大切なんです」

 

勉強会の講師として登壇した武田ですが、「がん治療と就労のテーマにエキスパートはいない」と続けます。

 

「『前はこうだったから』では通じなくて、対象者ごとに必ず異なる部分が出てきます。だからこそ、『自分はわかっていないんだ』という意識がとても大事。どのように変化に対応していくのかという点では、仕事と同じです。

必要な配慮について、本人からいつでも相談してもらえる信頼関係を作っておく。そして選択肢と、チームとしてやりたいことを合わせて示しておく。そういうところから納得感が生まれて、双方にとって良いところに着地ができるんじゃないかと思います」

 

最後に武田は、集まった人事の皆さんに、こんなメッセージを送りました。

 

 

「がんに罹患されたご本人も、その周辺の職場の方も、人事の皆さんを見ています。人事にとっては、人事としての価値観や優先順位、そして社員の方たちをいかに大切に思っているかを示す良い機会になると思います。がんはまだまだ思考停止してしまうワード。

だからこそ、がんをきっちりクリアすることが、全員活躍や生産性向上、働き方の改革に必ずつながっていくと信じています」

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