活動レポート

“がん体験者によるがん体験者のための会社”の代表が語る、離職の背景要因と会社に必要な配慮【第1回勉強会レポート】

“がん体験者によるがん体験者のための会社”の代表が語る、離職の背景要因と会社に必要な配慮【第1回勉強会レポート】

10月6日に実施した、人事の方向けの第1回勉強会。前回のレポートに引き続き、キャンサー・ソリューションズ株式会社代表の桜井なおみによる、「治療と職業生活の両立支援 〜組織と個人にできること〜」の講演内容の一部をご紹介します。

>>第1回勉強会レポート 株式会社クレディセゾンの「仕事と治療の両立支援施策」編はこちら

がんになった人の、3人に1人が離職している

 

 

自身が30代でがんを患い、現在はがん体験者によるがん体験者のための会社、キャンサー・ソリューションズ株式会社の代表と、働く世代のがん患者・家族の社会的支援を行っている一般社団法人CSRプロジェクトの代表理事を務める桜井。「がんが見つかった時、罹患者の胸の中にはさまざまな葛藤がある」と話します。


「がんが見つかった時、私は進行がんの状態でした。『どうして去年検診に行かなかったんだろう』という後悔が非常に大きかったです。時間は戻らないので切り替えるしかないですが、何かしらの自覚症状があって検診に行った人と、定期的に検診を受けている人とでは、がん発見時の生存率は約30%違う。この数字の重さがズシンとのしかかります。こんな気持ちを背負ったまま、仕事にも集中しないといけないのです」


この時にもう一つ重くのしかかるのが、お金の問題。桜井が実施した調査によると、がん罹患者の働く理由の一位は「治療費のため」。手術や薬はもちろんのこと、通院費や副作用で髪が抜けたときのウィッグ代などのお金も必要になってきます。


「がん罹患者の年収は、平均で約4割減。税金は前年度の収入に応じて請求されますので、治療費に加えて毎月5〜8万円を支払わないといけない。お金を理由に治療方法を変更した人が7〜8%、さらに約2%の方が治療を止めてしまっています。高額療養費制度のおかげで個人の負担は低く済むものの、その差額は国民全体で支えているのが現状です。だからこそ、『がん患者の方でも、働ける人はなるべく働こう』というのが大切。国家の成長を考えた時に、医療費の問題は大きいのです」


がん罹患者個人がお金の不安なく生活ができて、さらに社会の負担を下げるためには、治療と並行して、仕事を続けることが不可欠。しかし、2010年に一般社団法人CSRプロジェクトが行った調査の結果、3人に1人が、がんになった時に離職していることがわかりました。

 

 

 

「離職の原因で一番大きいのは、体力低下。あとは手術の後遺症や薬の副作用の問題。さらには、働きすぎると悪化するんじゃないかという心の揺らぎも影響します」

 

がん罹患者は、どのくらい動けるのか

 

 

2016年12月にがん対策基本法が改正され、社会全体でがん患者を支え、事業主はがん患者の雇用に配慮することが努力義務として掲げられています。国や自治体では助成金や表彰制度を用意する動きも出てきています。

 

 

「がん罹患者の再就職は、通常の約1.4倍厳しいことがわかっている」と桜井は話します。社会全体を見ても、会社としての採用・教育コストを考えても、離職を防ぐことが重要。ただ、がんに罹患した社員をサポートしようと思った時に、気になるのは「どのくらい働かせていいのか」という問題です。

 

 

「診断から1年以内は薬を伴う治療を行うことが多く、体が動かない日数は平均48日。見た目にはわかりませんが、薬の倦怠感は尋常ではなく、寝返りするのも嫌な感じです。また、副作用には、短期で終わるものと、長く残るものがあります。このタイムラインが違うのが難しいところで、例えば髪の毛が抜ける症状は、治療が終わった6ヶ月後くらいからだんだん地毛が生えてきますが、手先の痺れは数年間残る人もいます」

 

 

 

 

 

当日は、がん罹患者の副作用の一部を知ってもらうため、人事の皆さんに手先の痺れを疑似体験していただきました。軍手をはめて、その上からゴム手袋をつけ、日常の動作を行います。

 

 

 

 

「力が入らない」、「一枚名刺を取り出すのにすごく時間がかかる」、「面倒くさくてやる気がなくなってくる」など、その不自由さに驚く声が上がりました。「そのやりにくさと、その時感じた気持ちを、ぜひ覚えてください」と桜井。

 

 

「がん罹患者が離職してしまうタイミングは大きく2つあって、1つはショックのあまり診断されて1ヶ月以内に辞めてしまうケース。もう1つが1年目以降に復職してから辞めてしまうケースです。これは、私は副作用の問題が大きいと思っています。『これに注意すれば悪化しない』ということがないので、自己コントロール感が全くありません。これまで生き方や仕事の仕方を自分で決めてきたのに、それが副作用で通じない。そんな絶望感があります」

 

 

「大切なのは気持ち」と桜井は続けます。

 

 

「できないことの繰り返しに、情けなくなって、イライラする。しかもいつまで続くのかがわかりません。『元に戻れるのか?』という不安感を抱き、負のスパイラルに陥ってしまいます。だからこそ、モチベーションをしっかり支えていかなければなりません。きめ細かくコミュニケーションを取って、メンタルの状態に応じた制度や配慮が必要です」

 

 

 

 

事例から見る、企業がすべき配慮

 

 

具体的に、企業がすべき配慮とはどのようなものなのでしょうか。実際にがん罹患者を雇用した企業の事例をもとに、「ポイントは短時間勤務、時間単位の休暇制度、在宅ワークの3つ」と桜井は説明をします。

 

・短時間勤務

→35%の人が診断から1年以上経ってから離職。短時間勤務を取り入れ、時間や頻度を少しずつ増やすことがポイントに。

 

・時間単位の休暇制度

→放射線治療で1時間だけ休みたいのに、有給休暇制度が半日からしか取れない。時間単位で休暇が取れないことに悩む人は多い。

 

・在宅ワーク

→患者にとっては助かる仕組み。ただし、孤立化を防ぐために、Skype(スカイプ)などを使って顔を合わせることが大切。「あなたのことを応援してるよ」というメッセージを送ることが、本人はもちろん、家族の安心にもつながる。

 

 

また、定年退職後も働き続けたい人への両立支援も重要です。

「『定年を延長して週3日で働きたいけど、その時にがんだとわかって働けなかった。』そういう相談をよく受けます。がん罹患者にとって週3日勤務は、病院に通いながら働ける一番いいリズム。がんになっても社会的に健康であれば働けます。ぜひ再雇用する時には『健康』の定義をしっかり考えてください」

 

 

そして、柔軟な働き方を実現するための制度以上に重要なのが、「お互い様だから」という風土作り。

 

 

「病気や介護、子育てなどの問題を、社員同士で話し合える雰囲気を作っておくことが大切です。『お互い様』の風土作りは、日頃からのムーブメントを作ることが重要。自分たちの会社でどんなことができるか、チーム全体の仕事の負荷が大きくなっていないかという部分も含めて、全体調整をして行くことが大切かなと思っています。自社の制度や保険など、いろいろなものを組み合わせながら、がん罹患者だけではなく、社員全員が『この会社にいてよかった』とプライドを感じられる。そんな雰囲気の会社があふれる社会を、実現できたらいいなと思っています」

 

 

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