活動レポート

【がんアライアワード2021受賞企業 講演レポート】大鵬薬品・三菱ケミカルが取り組む、がんと就労の両立支援

【がんアライアワード2021受賞企業 講演レポート】大鵬薬品・三菱ケミカルが取り組む、がんと就労の両立支援

2021年11月29日、「がんアライアワード2021」表彰式をオンラインにて行いました。表彰式では受賞企業44社から代表して、ゴールドを受賞した大鵬薬品と、今回初エントリーでシルバーを受賞した三菱ケミカルが講演を実施。

 

本記事ではその様子をご紹介します。

 

<登壇者プロフィール>

大鵬薬品工業株式会社 人事部 亀田浩子さん

三菱ケミカル株式会社 総務人事本部 健康支援部 山本香織さん

大鵬薬品がん対策を通じて目指す、『いつもを、いつまでも』

 

今回で3度目のがんアライアワード受賞となる大鵬薬品。がん治療と仕事の両立支援をするようになった背景には、「抗がん剤メーカーとして、薬を通じて社会貢献をするだけではなく、生活や就業の面でもより良い社会づくりを目指す」という、社長からの健康宣言がありました。

 

 

「会社にとって大切な人財である社員が、がんなどの病気になっても安心して働き続けられる職場環境を整える。それは結果として、がんに罹患した社員の意欲や生産性の向上にもつながるように思います。そして、さまざまな事情や背景を持つ人が働きやすい職場は、優秀な人財の確保につながり、企業の競争力を強化します」

 

同社は抗がん剤メーカーということもあり、家族や身近な人にがん罹患者がいる社員も多く、「がん罹患者に貢献したい」という想いを持って入社する人も珍しくありません。

 

「一般企業よりもがんへの理解があり、両立支援の取り組みも受け入れられやすい風土だった」と亀田さん。そのため両立支援の取り組みを本格的に始める以前から、社員ががんなどの病気になった際は個別に対応をしていました。

 

「日本でがん罹患者数が増加するに伴い、2013年頃から就業規則を改定するなど、対策に力を入れ始めています。2016年に東京都から 『がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰』を受け、その後は制度だけでなく、早期発見や予防の強化、相談窓口や支援制度の拡大などを行ってきました」

 

その活動をまとめたものが、以下の表です。

 

 

「制度面の充実だけでなく、情報発信や周知活動にも力を入れています。一人でも多くの社員に取り組みを伝え、自分ごととして捉えてもらえるように、多方面からのアプローチを心がけています」

 

こうした社内の活動を行うと同時に、同社では社外に向けた取り組みも推進しています。

 

「グループ会社をはじめ、他の企業や団体の皆さまにとって何かしらヒントになればと思っています。多様な背景を持つ方が働きやすい環境づくりをするために、少しでもお役に立てればうれしいですね」

 

 

同社の社内の活動は、大きく「制度」「情報」「相談」の三つに分類されます。その中の「情報」と「相談」について、詳しい内容が紹介されました。

 

 

・情報

「病気になったときに知りたい情報がすぐに分かるよう、社内イントラネットに就労支援に関する情報をまとめたWeb冊子を用意しています。ご本人だけではなく、上司や同僚、ご家族など、周囲の方もご利用いただけます」

 

また、これまで育児や介護に関する情報を載せていた、イントラネットの『ライフイベント支援ガイド』に、病気になった場合の情報も追加。

 

「日頃から社員の皆さんに認識をしてもらえるように、育児や介護と並べて掲載をしています。『人生で起こり得ること』に対して、ここを見れば仕事と両立するためのさまざまな情報が得られるようにしました」

 

他に社内向けのがん情報総合ポータルサイト『C-Guide Portal』を作り、がんに関する情報を集約。

 

「『C-Guide Portal』には、がんに罹患した社員やそのご家族の体験記が掲載されています。製薬企業の社員だからこその話もあり、社員が共感しやすい内容になっていると思います。あとは2023年までに喫煙ゼロを目指しており、病気予防の意味も込めて卒煙情報も載せています」

 

・相談窓口

 

「がんや病気は、治療法や困りごと、希望する働き方など、状況が人によって異なります。人によって相談内容が異なるため、まずは入口となる相談窓口を広く設け、その後それぞれに合った対応ができるよう、各相談窓口につなげています」

 

医療や労務、キャリアなど、さまざまな専門性を持つ人と相談者をマッチングし、必要に応じて上司のサポートも実施。治療をしながらどのように働いていくのか、今後のキャリアについて相談する社員も近年は増えているそうです。

 

同社ではこうした取り組みを社員に伝えるために、社内イントラネットで発信をしたり、研修で紹介をしたりする他、体の不調に加えメンタルヘルスケアの啓発も行い、組織的な健康管理を推進しています。

 

 

がん治療と就労の両立支援を円滑に進めるための鍵を、亀田さんは次のように語ります。

 

「関係者だけでなく、上層部や上司、同僚の理解、社内外の協力や支援を受け入れる会社全体の環境づくりが必要だと思っています。相手の気持ちを理解した行動や、ちょっとした配慮があるだけで、さまざまな背景を持つ人が働きやすい職場になります。病気に限らず、お互いに支え合う職場づくりが大切なのだと思います」

 

 

今後について、亀田さんは「社内での活動と社外への発信をより強化していきたい」と続けます。

 

「大鵬薬品の想いである『いつもを、いつまでも』を実現できるよう、社会に貢献できる情報発信をしていきたいと思っています。当たり前のように続くことを当たり前と思わず、いつもの状態がいつまでも続くための支えとなる。さまざまな背景を持つ方が働きやすい社会になるよう働きかけを進めていきたいと思います」

 

>>【がんアライアワード2021 ゴールド】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策

 

三菱ケミカルが行ってきた、三つの取り組み

 

三菱ケミカルは2017年発足以来、『KAITEKI健康経営』を掲げ、健康支援と働き方改革を両輪とした「多様な人材がイキイキと活力高く働ける職場づくり」に取り組んでいます。

 

2018年には従業員の声を踏まえ、取り組み施策を30の宣言にまとめて発信。病気の治療と仕事の両立支援は、その宣言の中でも土台となる一つです。

 

講演では取り組みの中から、3つのポイントが紹介されました。

 

1.社長メッセージ

 

2019年に病気治療と仕事の両立に関する社長メッセージを発信。そのきっかけは、「東京労働局のホームページに経営トップの基本方針を掲載しないか」という誘いの声がかかったことでした。会社としても重要視していることを示すために、社長メッセージは自社ポータルサイトの「治療と仕事の両立支援」カテゴリのトップページにも掲載しています。

 

「社長メッセージによって、当事者やその上司から治療と仕事の両立支援に関する問い合わせが増えました。また、事務局が取り組みを言語化できたことで、方向性と軸ができ、自信を持って施策を進められる状態を整えられたと思います」

 

2.オンラインがんサロン

 

同じく2019年から、「がんサロン」をスタート。そのきっかけは、「がんに罹患した従業員の声を聞きたい」というものでした。

 

「当時、本社勤務の従業員から、がん治療と就労の両立に関する相談はほぼゼロでした。約2000人の従業員がいて、がん罹患者がいないはずはありません。悩みごとや困りごとがあるのかどうかすらわからない状態でした」

 

開始初期は「サロンというよりは、個別相談会のような状態」でしたが、コロナ禍で運営をオンラインに切り替え、対象も全社に拡大。参加者は増えつつあります。

 

「発言やカメラオンは任意ですが、場の雰囲気で自然にカメラをオンにしてお話してくださる方がほとんどです。毎月サロン開催の案内をする中で、従業員から声をかけられることも増え、サロンの発信自体が両立支援の風土づくりにつながっているのを実感しています」

 

「がんサロンには、がんの種類や病気の経過が異なる方たちが参加をしています。それでもがんという共通の経験を通じて、お互いに共感し合える、ほっとできる場になっている。がんサロンによって両立支援の風土が根づき、それが弊社ビジョンである『KAITEKIの実現』につながっていくと考えています」

 

参加者からは「定期的に気持ちを吐露できる場所があって安心できる」「それぞれ不安を抱えながら、それでも前向きに活躍していることを実感できた」といった声が上がっているそう。

 

今後はピアサポートの機能に加え、がん罹患者以外の従業員に向けてもがん経験をシェアする場を設けることも検討中です。

 

3. 治療と仕事の両立支援ハンドブック

 

2021年、私傷病事由の短時間・短日数勤務制度を導入。制度拡充によって病気や治療の状況、本人の希望に応じた「休業」と「治療と仕事の両立」を柔軟に選択できる環境が整いました。

 

そこで必要になったのが、国内25拠点の全てに制度を周知し、実際に活用できる状態をつくるためのガイドラインです。

 

「作成の際は視点が偏らないように、本社だけでなく、製造、研究、営業拠点の人事や健康支援スタッフを公募し、ワーキンググループを立ち上げました。各拠点の人事や健康支援スタッフ、労働組合との意見交換をしながら進め、完成したのが『治療と仕事の両立支援ハンドブック』です」

 

ハンドブックは全社の共通の資料として活用。関係者の役割や両立までの流れが明確化されているだけでなく、制度活用のイメージがより具体的にわかるよう、モデルケースも紹介されています。

 

オリジナルのイラストを入れるなど、手に取った人が温かみや希望が持てるよう、デザイン面でも工夫がされています。

三菱ケミカルが、がんアライアワードにエントリーをしたのは今回が初めて。2018年に仕事と治療の両立支援プロジェクトが発足し、何をすべきか情報収集に明け暮れる中、2019年2月にカルビー本社で行ったがんアライ部交流会に参加。それが、がんアライアワードを知ったきっかけだったそうです。

 

「両立しやすい環境を整えるには、制度の拡充が必要。それができたら、がんアライアワードにエントリーしようと思っていました。そのような中、育児・介護休業法の改正に合わせて私傷病事由の短時間・短日数勤務制度を作ることに。制度が拡張できたことで、次の課題は風土づくりとなり、その取り組みの一環としてがんアライ宣言・がんアライアワードのエントリーに至りました」

             

「がんアライアワードへのエントリーは、社内の風土づくりに必ず役に立つ」と山本さん。一方で、がんだけを特別扱いしないという意図から、がんアライ宣言はあえて「病気」という表記を使っています。

 

「がん以外の病気に罹患している従業員が『がんだけが特別扱いされている』と感じてしまうのではないか。がんに罹患している従業員にも、やはりがんは特別な病気なのだと思わせてしまうかもしれない。そのような懸念から、がんアライ宣言では『がん』ではなく『病気』としています」

 

▲同社のがんアライ宣言

 

山本さんは、「治療と仕事を両立する仲間のことを、『かわいそう』『気の毒』ではなく、思いやりをもって「当たり前」の心で「働く」を受け入れ支えてほしい」と続けます。

 

「支えていると思っている側も、知らないうちに恩恵を受けていると気付くことがあるはず。一方で支えてもらっていると思っている側も、病気と仕事の両立を通じて、職場にプラスの影響をもたらしていることがあるはずです」

 

治療と仕事の両立のイメージを変え、多様な背景や価値観を持つ従業員が活躍できる環境づくりの一環として、社内PRを実施。 組織の風土づくりに力を入れ、引き続き取り組みを行おうとしています。

 

「いつでも目に留まるように、ポスターなどのPR媒体を制作し、各拠点で掲示してもらっています。こういった資料制作、配布などの一つ一つの作業にもたくさんの人々が関わっていて、ここでもまたがんアライの輪が広がっているのを実感しています」

 

「PRを進める中でさまざまなご意見をいただくこともあり、話し合い、歩み寄りながら一歩一歩を進める苦労もありますが、少しずつ輪が広がっているうれしさもあります。私たち三菱ケミカルは、病気になっても安心して働ける当たり前の未来を目指して、これからも治療と仕事の両立支援に向けて取り組みを進めたいと思います」

 

>>【がんアライアワード2021 シルバ-】三菱ケミカル株式会社の「がんと就労」施策

 

>>「がんアライアワード 2021」受賞企業と事例集はこちら 

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