活動レポート

「がんアライ宣言は最初にできる両立支援」大家族主義・MTGの温かな取り組み【名古屋勉強会レポート】

「がんアライ宣言は最初にできる両立支援」大家族主義・MTGの温かな取り組み【名古屋勉強会レポート】

がんアライ部初となる、地方での勉強会を1月25日(金)に名古屋にて行いました。16社24名が参加し、会場は満席となりました。ここでは、第1回がんアライ宣言・アワードでゴールドを受賞した株式会社MTGの講演の一部をご紹介します。お話ししてくださったのは、人事本部人事労務部長の吉田英里さん。名古屋に本社を構える同社の取り組みは、とても温かいものでした。

 

>>株式会社MTGのがんアライ宣言・アワード応募レポートはこちら

 

がんと仕事の両立支援のベースにある、MTGフィロソフィーと“美work”

 

現在、MTGの従業員数は1483名。「6年で従業員数が約5倍に増える中、がんと向き合う機会が増えていった」と吉田さんは振り返ります。

 

「がんと仕事の両立について考えるようになったのは、ここ3年ぐらいのことです。サバイバーの方と一緒に働き方や環境づくりについて話し合いながら、取り組みを行ってきました。まだまだ制度が整っているとは言えませんし、まさにチャレンジしているところです。がんアライ宣言・アワードでも、制度というよりは想いの部分を評価していただいたと思っています」

 

制度やルール、そしてがんに罹患しても働き続けられる環境をつくる上で、同社が最も大切にしているのが、何かに悩んだ時に判断の指針となるフィロソフィーです。

 

「当社の企業理念は『一人ひかる 皆ひかる 何もかもひかる』です。どのような状況にあっても、一人一人が光る環境を作りたいと思っています。また、私たちはブランド開発カンパニーとして『ReFa』や『SIXPAD』などの製品を世に出していますが、私たち人事労務部のミッションは『自社の商品に負けないぐらい、働き方もブランド化する』こと。“美work”というキーワードを掲げ、どんな働き方であっても、どんな制約があっても、自分の選択に自信と覚悟と責任を持ち、ビジネスのプロとして心身ともに美しく働くことを目指しています」

 

同社のがんと仕事の両立支援のベースには、こうしたフィロソフィーや“美work”の考え方があると言います。その取り組みは「言える」「分かり合える」「選択できる」の大きく3つに分けられます。

 

1. 言える

 

がんだと言える風土をつくる上でポイントになっているのは、「大家族主義、充実した相談体制、がんアライ宣言の3つ」と吉田さん。

 

 

●大家族主義(会社も家族)

「がんと仕事の両立には、社内はもちろん、ご家族の理解が必要です。以前、がんに罹患した社員は働きたいと希望していて、主治医もOKを出しているけれど、ご家族は治療と仕事の両立を心配し、不安視しているということがありました。無理をして、もしものことがあった時に誰が助けてくれるのか。会社はそこまで責任を負えるのか。そうご家族がお思いになるのは当然だと思います。

 

そんな中で私たちにできることはなんだろう。そう考えた末、ご家族にご来社いただき、どんな環境で、どんな人と、どんな雰囲気で仕事をしているのかを見ていただきました。同時に面談も行い、会社として治療と仕事の両立を応援することをお伝えし、最終的に『ただの従業員ではなく、家族として考えている』ことをご理解いただけました

 

もしもの時の動き方についても、『救急医療情報シート』を用意することで安心していただけたと思います。家族や病院の連絡先、服用中の薬、一命を取り留める可能性を広げるための緊急時の対策など、主治医の先生にも相談をしてもらいながら作成したシートです。救急医療情報シートは人事だけでなく、ご家族にも共有し、もしもの時の体制を整えています

 

●充実した相談体制

「それぞれの専門性や特性を生かした、相談体制を用意しています。働き方やキャリアに関する相談は私達本社人事労務が受け、各部門の人事は日々の本人の顔色や働いている様子を見ながらフォロー。そして病気に関する相談は常勤の産業保健スタッフが担っています。各相談窓口と本人、そしてご家族で連携をしているのは、当社の特徴だと思います」

 

●がんアライ宣言

 

実はがんアライ宣言をしたあと、『実は私もがん治療後の経過観察中です』『本当はがんのことを相談したかったけど、誰に言っていいのか分かなくて悩んでいた』と、2名の従業員が相談に来てくれました。復職したての社員は、社内の理解を事前に得た上で、堂々と帽子をかぶって、休職前よりもパワーアップした姿で、時短勤務でバリバリ働いてくれています。

 

こうした行動を起こしてくれた背景には、がんアライ宣言を通じて、『会社はがんに対して理解がある』と伝わったことが大きいと思っています。これまで培ってきた風土や体制に加え、がんアライ宣言をしたことが、当事者の“がんだと言う勇気”を後押しする、大きな力になっているのを感じています」

 

2. 知る分かち合う

 

「救急医療情報シート」の他に、MTGでは携帯できる「救急情報カード」も用意。通っている病院や服用中の薬、緊急連絡先などが記載されたカードは、社員証と一緒にネックストラップに入れられるようになっています。

 

「就業中に救急車を呼ばなければならないようなとき、救急情報カードがあれば、必要な情報を救急隊にいち早く伝えることができる。がんに限らず、さまざまな病気との両立を応援することにもつながっています」

 

また、がんへの理解を深めるために、産業医の先生による講演を実施。乳がんや男性特有のがんなど、その都度テーマを設定し、がんという病気が身近になってきていること、そして、治療ができるようになりつつあることを周知しています。「長く向き合う病気になってきていることを、皆が理解するようになりつつある」と吉田さん。また、希望者に限定し、サバイバーとサバイバーをつなぐ橋渡しもしているそうです。

 

3. 選択する

 

“美work”を実現するためには、「自分で自信と覚悟と責任を持って、働き方や環境を選択できる」ことが重要。そのためにMTGでは、大きく3つの制度を用意しています。

 

・L worker制度(短時間勤務の正社員として働ける制度)

・スライド勤務(治療の時間の融通が利くように認める制度)

・休職制度

 

「“L worker”のLは、“ライフ”と“リミット”と“ライアビリティー(責任)”のこと。治療だけでなく、育児や介護も含まれます。1日8時間、7時間、6時間、5時間のいずれかの勤務時間で、週5日勤務を原則として、時短でも正社員として働ける制度です。賞与はありますが、残業や土曜日出社ができない分、通常の総合職より給与テーブルは少し下がります。そうした給与や働き方の制約があることを理解してもらった上で、希望の従業員は自信と覚悟と責任をもってL worker制度を選択できます」

 

「正直、制度についてはまだまだ検討中」と吉田さん。特に休職制度については、課題も感じていると話します。

 

「弊社の休職制度は他社様と比較すると短くて、6カ月間だけです。がんの方の場合、それでは戻って来られない人も出てきてしまう。そこへの葛藤はとてもありますが、休職期間を延ばすことはどうしても難しいと言う現状があります。

 

そこで今検討しているのが、『おかえりなさい制度』です。弊社の決めた条件・要件を満たし、治療を終えて戻れる状態になった人に、『おかえりなさいチケット』を渡す制度を考えています。私傷病による休職期間満了者だけではなく、介護・育児によって退職せざるを得ない状態になってしまった人、ご家族の転勤によって退職せざるを得なくなってしまった人も対象にし、MTGでまた働きたいと思ってくれる人が『戻りたい』と言いやすい状態をつくれればと思っています」

 

がんアライ宣言は、最初にできる両立支援の取り組み

 

 

MTGでは他にも、がんアライ宣言・アワードの表彰式の際にガデリウス・ホールディングス社が発表していた、消滅直前の有給の寄付制度の導入に向けて取り組みを進めています。こうしたまだまだ社内検討中の制度をあえて共有した理由を、吉田さんは次のように語ります。

 

がんアライ宣言によって、がんについて考える機会が増え、社内の理解が進んだことを知っていただきたかったんです。じゃあ次は、『戻る場所があることが治療の支え』と言ってくれる従業員に対して、私たちは何ができるのか。『戻る場所を、居場所を、生きがいを』というのが、今ディスカッションしているテーマです」

 

「ぜひ、がんアライ宣言にチャレンジしてほしい」と吉田さん。

 

「『まだ制度が整っていないから宣言できない』とお考えの方もいると思いますが、がんアライ宣言は最初にできる両立支援の取り組みだと思います。宣言をしたからこそ考える機会が増え、がんと仕事を両立できる風土ができていく。それが何より重要です。もしも今日私がお話ししたことが、皆さんの会社の中での大きな一歩に繋がるのであれば、とても嬉しく思います」

 

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