活動レポート

「 がんになった社員の雇用を諦めないで。それだけで当事者は救われる」がん罹患経験者が語る、働き方とキャリア

「 がんになった社員の雇用を諦めないで。それだけで当事者は救われる」がん罹患経験者が語る、働き方とキャリア

2018年12月12日に「がんサバイバーが語る。キャリアの在り方と、組織としての活かし方 ~復職、経営、起業、そして”活躍”~」と題したトークイベントが行われました。

 

登壇者は、2014年に虫垂がんに罹患したのち、2度の転移を経験し、ステージⅣ、5年生存率12.5%の告知を受け、現在は経過観察中の金澤雄太さん。第4回がんアライ部勉強会の講師を務めてくださった、社労士の近藤明美さん。そして、がんアライ宣言・アワードでゴールドを受賞した株式会社エーピーコミュニケーションズ副社長の永江耕治さん。

 

がんに罹患した経験を持つ3名が、自身の仕事観の変化や復職後の働き方、その後のキャリアについて語りました。

 

【登壇者】

金澤雄太さん(上記写真左)

2014年に虫垂がんに罹患。二度の転移を経験し、ステージⅣ、5年生存率12.5%の告知を受ける。現在経過観察中。2017年より闘病ブログ執筆、がんと就労に関するスピーカー活動を開始。

http://www.cancernet.jp/speaker/post348

 

近藤明美さん(上記写真中央)

2004年に乳がんに罹患。復職するも勤め先の倒産をきっかけに社会保険労務士資格を取得、開業。現在は社労士業務と並行して「病気(がん)になっても働き続けられる社会」を目指し、サポートグループ運営や各種イベント登壇など精力的に活動。

https://www.kondo-sr.biz/

 

永江耕治さん(上記写真右)

2010年に精巣がんに罹患。手術、抗がん剤治療を経て復職。現在は取締役副社長として経営を担う傍ら、がんアライ部などがんと就労に関する外部活動にも積極的に参画。

https://twitter.com/kooozii

 

「待っているから、まずは治すことに専念しろ」上司がこう言ってくれたから、雇用への不安はなかった

 

−−罹患後、一番不安だったことは何ですか?

 

近藤:お金のことですね。好きな仕事だし続けたい思いもありつつ、続けないと生活ができないという現実的な問題もありました。実際に相談を受けていても、「働きたい」と「働かなければならない」の間で悩んでいる方は多いですね。

 

金澤:僕は雇用への不安はなかったんです。上司が病気のことを受け止めて、「待っているから、まずは治すことに専念しろ」と言ってくれたことが大きかったですね。今の自分があるのは上司と同僚に支えてもらったからで、それが特別でありがたいことだとも思っています。

 

近藤:目の前の仕事を日々やっていく中で、病気を経ても働けるという自信がついていくものだと、今振り返って思います。制度ももちろん大事ですが、働く場所があること自体が本当にありがたいことですよね。ただ、小さい会社ほど、一人の社員が休職すると仕事が回らなくなってしまいますから、戻る場所を空けておくわけにはいきません。新しく採用をするわけですが、元いた社員が復帰するからといって、新しく入った人を辞めさせるわけにはいかない。この点は難しいところだなと思います。

 

 

永江:僕はがんの告知をされた当日に手術をすることになったので、引き継ぎもできないまま半年休職をしました。当時は執行役員でしたし、「皆困るだろうなぁ」と思っていたのですが……、意外と増収増益を続けていて(笑)。組織がある程度の規模になると、役員が1人抜けても回らないことはないんだなと思いました。

 

−−がん治療後に復職をして、不便なことや困難だったことはありますか?

 

永江:体力ですね。定時まで仕事をしたらクタクタになってしまって。幸い2カ月ぐらい経ったら元に戻りましたが、最初は「こんなに疲れるのか」とショックを受けました。僕の場合は復職時には治療を終えていましたし、後遺症もなかったのですが、同じ精巣腫瘍の人でもステージによっては後遺症が残る人もいます。一見元気そうに見えるけど、実は後遺症でつらい思いをしている人もいるということは、がんに罹患した経験のない人にとってはイメージしにくいだろうなと思います。

 

近藤:私も通院は3カ月に1回だったので、あまり苦労することはなかったです。ただ、ホルモン療法を5年間続けていたので、イライラするのは仕事のせいなのか、ホルモン療法の副作用なのかが分からない葛藤がありました。あまり弱いところを見せたくなかったから、職場の人には話しにくかったですね。

 

金澤:4年前の罹患当初、僕はマネジャーとして5名のメンバーを見ていました。休職後、マネジャーとして職場に戻ったものの、4〜5日で「これは無理だ」と思ったんです。フルタイムで働くことも、お客さま先に訪問することも、ゼーハーゼーハー言いながらなんとかやっている状態。自分のことで手一杯なのに、メンバーの人生まで考えられなくて。復帰した週の金曜日には「すみません、マネジャーは無理です」と上司に伝えました。

 

 

金澤:マネジャーを下りてほっとした反面、メンバーに戻ることへの葛藤もすごくあったんです。周りからの見られ方も気になったし、元メンバーが僕の上司になった。病気のせいにも、病気じゃないことのせいにもして、いろいろなものをごっちゃにしながら葛藤して、どうにか飲み込んでいった感じですね。

 

 

職種転換の時は「あなたに任せたい」という前向きなメッセージと活躍の場を用意して

 

−−あって良かった、もしくはあったら良かったと思う制度やサポートはありますか?

 

金澤:罹患して4年経ちますが、当社にはがんになった人のための制度は今もありませんし、個人的には僕もほしいと思っていません。時間の融通がとても利くので、変に周囲に遠慮することもありませんし、本当にありがたいと思っています。

 

フレックス制でコアタイムは11時~16時、基本的にはホワイトボードに出社時間を書いておけばOKです。有給も上司への口頭申請でよくて、しかも半休でも取得できます。がんサバイバーとしては、「朝出社したもののつらいから午後は帰宅して休む」とか「朝通院してから午後出社する」といった、フレキシビリティを持って動きたいんです。

 

永江:時間の融通が利くというのはすごく重要ですよね。当社でも現在、時間休制度の導入を検討しています。がんに限らず、他の病気や介護の問題も含めて、フレックス制度や時短勤務、時間休制度など、柔軟に働けるための制度はあった方がいいと思っています。

 

 

近藤:私は社労士としてさまざまな企業からご相談をいただきますが、例えば介護施設など、柔軟な働き方を実現するのが難しいイメージの企業からのご相談も多いです。その場合、職種転換や配置転換が必要なケースもありますが、そうなるとキャリアの問題が出てくるんですよね。「職種が変わるなら辞めます」という方も出てきてしまう。

 

金澤:会社側が配置転換や職種転換を提案するとき、もちろん病気が理由ではあるんでしょうけど、ただ「楽なところだよ」というだけでは不十分だと思うんです。新しい仕事も大切な役割であること、「あなたに任せたい」という期待を伝えて、前向きなメッセージやキャリアを提示することが重要なのではないでしょうか。それがあって初めて、当事者は「じゃあ新しい場所で頑張ってみよう」と受け止められるんだと思います。

 

近藤:おっしゃる通りだと思います。最近では、「がんに罹患した社員の活躍のフィールドを作るのが自分の仕事」とお考えになる中小企業の経営者の方も増えてきています。そうやって活躍の場がつくれれば理想的ですよね。

 

金澤:がんサバイバー個人も「今置かれた場所でどう前を向くのか」を考えることが、個人的には大切なのかなと思っています。僕はがんになってからの4年間で、生活も死生観もキャリア観も変わって、置かれる場所も変わったんですよね。今自分が置かれている中で、「より良い未来をどうやって作ろうか」ということを模索しながら生きていらっしゃるサバイバーの方はたくさんいらっしゃると思います。

 

 

制度よりも「それぞれの立場からがん罹患者に思いを馳せる」ことが大切

 

−−がんアライ部など、がんと就労に関する社会的ムーブメントがあります。こうした動きについてはどう思われますか?

 

永江:すごくいいなと思っています。がんに罹患した社員がいた時、経営や人事は「何とかしたい」って思うものなんですよ。でも、他のさまざまな事情を抱えた社員もいて経費も限られる中、思いだけで勝手にやれない部分もある。

 

だからこそ、がんと就労への取り組みが注目を集め、社会に認められ、自社で取り組むことで企業価値が上がるといった、何かしらの大義名分があると動きやすいんです。がんと就労に関する社会的なムーブメントがあることで、「もっとやった方がいいんだ」っていう空気感が強くなりつつあるように感じています

 

−−大事なことだとは思いつつも、及び腰の企業もいると思います。そういった企業をどう巻き込んでいったらいいでしょうか?

 

永江:がんアライ部のアワードで当社はゴールドを受賞したんですけど、がんに罹患した人に向けた特別な制度があるわけではないんです。“がんと就労の問題に取り組んでいる姿勢”を認めていただいた。他社の方とお話をしていると、がんに罹患された方への配慮をきちんとしているのに、「会社として取り組んでいるわけではないから」とおっしゃる方が少なくないんです。そういう会社の姿勢を認めるという意味で、僕はがんアライ部のアワードはとても良かったと思っています。

 

−−最後に、がんと就労に取り組む人事担当者や経営者の方に向けてメッセージをお願いします。

 

金澤:がんになった社員の雇用を諦めないでいただきたいです。特別な制度よりもずっと大事なことで、それだけで社員は救われます。雇用とお金のところがクリアになれば安心できますし、生きる気力が沸いて前向きになれるんですよ。

 

近藤:うちの事務所にはがんサバイバーがいて、明後日入院のために休職するんです。優秀な方で、仕事も熱心で、その方がいてくれないと困るんですよ。「絶対戻ってきてね!」と強く伝えましたが、人事担当者や経営者の皆さんには「社員の方のことを大切に思っている」ことをぜひ伝えていただきたいなと思います。

 

永江:僕は「コンパッション」という概念が重要だと思っています。共感と近いけれど少し違って、「ただただ相手のことを考える」ということ。制度ではなく、「会社の中でできることは何だろう」「あの人がうれしいことは何か」にそれぞれの立場から思いを馳せることがスタートだと思います。これができている会社は意外と多いんですよ。たとえ制度がなくても、そういう会社がもっと胸を張って「がんと就労の両立支援をやっている」と声を上げられるようになるといいなと思います。

 

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文:天野夏海

 

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