がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2023シルバー】旭化成株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2023シルバー】旭化成株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

シルバー受賞:旭化成株式会社

業種:化学

従業員数:連結48,897人 (2023331日現在)

https://www.asahi-kasei.com/jp/

働く人を支える制度・ 体制

 

【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明

健康経営宣言/がんアライ宣言 

 

当社グループでは、これまでの環境安全・品質保証活動における健康管理を発展させ、健康に関する取り組みを全社経営課題と位置づけ「健康経営」を展開しています。

 

■健康経営宣言

2020年10月に、グループの「健康経営宣言」を発表しました。企業価値を持続的に向上させていくには、「人財がすべて」であり、従業員が心身共に健康で活躍できる環境を、会社として整備することがますます重要になってきています。そこで、同宣言において掲げた、「グループ健康経営ビジョン」に基づき、「健康経営」をさらに推進しています。

 

>>労働安全衛生および健康経営

 

■がんアライ宣言

がんアライアワード2022応募時に宣言しました。社内の広報媒体にて、広く従業員に周知しております。

 

 

【2】休暇制度

傷病・病気休暇制度/傷病・病気休職制度/失効有休休暇積立制度/半日単位の有給休暇取得/時間単位の有給休暇取得/その他の休暇制度

 

■がんを含む私傷病に対する支援として、有給の「サポート休暇(消滅する年次有給休暇のうち、1年に5日を限度として繰り入れ、保有限度日数は40日 )が付与されており、入院や通院による治療のために利用することができるため、社員自身の治療(入院・通院)および、社員の家族の疾病等に伴う看護ケアに集中することが可能です。 (その他の休暇制度)

 

■年次有給休暇は、1日単位、半日単位(半日休暇)だけでなく、1時間単位(時間単位休暇)で取得することが出来ます。また、フレックスタイム制度も導入しており、がんに罹患した際も、働きながら治療・通院ができ、フォローアップの診察等も定期的に受診が可能です。

 

■治療のための通院時間確保支援制度

仕事と治療を両立する従業員が治療や通院に必要な時間を確保し、継続的な就労を可能とするための制度を2023年3月1日に創設しました。本制度は、「通院が必要ではあるものの、通院時以外は支障なく通常の勤務を実施することが可能な状態である従業員」を対象としています。治療の内容が、所定労働時間内に勤務することが避けられない状況(例:抗がん剤治療など)であり、定期的な通院の必要性がある場合、無休・無給で認める制度になります。

 

【3】勤務制度

時差出勤制度/フレックス勤務制度/在宅勤務(テレワーク)制度/サテライトオフィス勤務制度/短時間勤務制度/リハビリ出勤制度(復職後、休職前の勤務時間より短時間で勤務する等の制度)

 

■治療のための通院時間確保支援制度

病気治療のために所定労働時間内に通院せざるを得ない時に、フレックスタイム制度または勤務免除(無給)のうち、本人が希望する制度の適用を受けることができる(年休保有日数等の条件あり)

 

【4】支援体制

社員相談窓口の設置/保健師・産業医等の医療職の支援/外部医療機関との連携/外部支援サービス(EAP等)の活用/上司等との1on1、面談等の機会/人事担当者等との面談等の機会/主治医との書面上での情報連携/(休職を要さない場合)両立支援プランの策定・実行/休職中のフォロー/(休職した場合)職場復帰支援プランの策定・実行/復職後のフォロー

 

■全国各拠点に健康管理を担う医療職がおり、健康診断後のフォロー、受診勧奨、健康相談を実施しており、従業員が随時相談できる体制ができています。医療職の面談では、主治医との連携や外部医療機関への紹介等も頻繁に実施しており、疾患の早期発見早期治療、社内での適切な就業配慮につながっています。休職中および復職後も各地区医療職が主治医や職場と連携し、治療と仕事の両立を支援しています。

 

■健保契約の「みんなの家庭の医学」では、各種医療情報が得られるほか電話やオンラインで健康相談が可能のため、社内では相談しにくい場合も外部支援を受けることが可能です。

 

■上司との1on1など面談の機会を設けて健康管理区分や勤務配慮事項の確認などを行い、働きやすい環境づくりにつなげています。

 

【5】健康増進支援 

健康診断受診率増加に向けた取り組み/がん等の任意検診受診費用の補助/人間ドッグ費用の一部補助/健康診断で「要検査」となった人のサポート/必要に応じた産業医・保健師の面談/定期的な産業医・保健師との面談/禁煙に関する取り組み/日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)/健康増進イベントの開催/健康管理に関するアプリの配布

 

■定期健康診断では、胃がん、子宮がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの検診を全額会社負担で任意実施しており、国のガイドラインより広く受診年齢を設定し、受診を促しています。(国のガイドラインより広く実施⇒胃がん検診(胃内視鏡も選択可):30歳以上、乳がん検診:30歳以上隔年、大腸:全社員)

 

また、がん検診希望調査前にがん検診の重要性に関する啓発活動(eラーニングやセミナー、メルマガ等)を行い、社員の意識を高め、検診受診者の増加につなげています。

 

検診受診後も、精査受診勧奨のための資料をよくある問い合わせとしてまとめて受診勧奨メールに添付するなど工夫しており、精査受診率向上につなげています。

 

■定期健康診断に加え、希望者には人間ドックの中で胃がん、子宮がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん等などのがん検診を受診し人間ドック費用の補助を実施しています。

 

■全国各拠点の医療職のサポートも随時受けられ、適切な医療機関との連携も実施し、早期発見早期治療につながっています。

 

■禁煙支援に関しては、2024年度~就業時間内禁煙、2025年度~敷地内禁煙の全社方針を掲げ、禁煙サポート(外部委託のプログラム含む)を健保及び事業所で展開しています。

 

■日常的な健康増進では、健康経営施策としてウォーキングアプリの導入やウォーキングイベント開催、運動動画等での推進、ヘルシーメニューコンテストなどの食生活関連イベント、睡眠セミナーの開催等を実施し、従業員の意識向上を図っています。

 

働く人を支える風土、環境

 

【1】啓発、研修

社員向けのがんに関する研修/上長・管理職向けの両立支援に関する研修/女性向けのがんに関する研修/がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供/罹患者の体験談を聞く機会の提供

 

上長・管理職向けの両立支援に関する研修

管理職研修の中に、「治療と仕事の両立支援」についての項目を設定し、マネジメント上の配慮について教育を実施しています。他、「乳がんの治療をしながら就労するケース」を事例検討に加え、個々の状況に応じた配慮を行い、対応に迷う場合は産業保健スタッフに相談する等、社員の一番身近な管理職への啓発を行っています。

 

  

 

■女性向けの癌に関する研修

2023年7月にがん研有明病院 婦人科 副部長 野村秀高医師に、「女性の癌」をテーマに講演いただきました。女性特有のがんである「子宮がん」や「卵巣癌」をはじめ、遺伝性乳癌卵巣癌症候群、リンチ症候群などの話も盛り込まれています。テーマは女性の癌ですが、男性にも閲覧可能な社内教育システムに掲載しています。

 

 

■がんに関するe-Learningの実施

翌年の健康診断の案内を毎年10月に実施するため、従業員のがん検診受診率向上のきっかけづくりを目的に、2023年8月に、全社一斉教育として「がん予防と両立支援」をテーマとしたe-Learningを約3万人の従業員を対象に実施しました。(受講率:95.7%)

 

 

本e-Learningは、がん対策推進企業アクションの中川恵一先生監修の教材を活用した教育です。

 

 

がんの知識およびがんのリテラシーに関するテストを実施し、現時点での従業員の理解度を測ることもできました。また、教育資料の最後に、治療と仕事の両立支援に関する社内制度などの情報をまとめることで、従業員がすぐに情報にアクセスできるようにしました。

 

 

 

【2】情報発信

イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信/メルマガ等での情報発信

 

イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信

人事部ダイバーシティ推進室の社内向けHPに「治療」に関するページを設置しています。コンテンツ内容としては、治療関連支援制度一覧や、相談先の情報、治療と仕事の両立支援に役立つ情報を掲載している。

 

 

■メルマガ等での情報発信

2023年10月1日のピンクリボンデーのPRのために、従業員へメールを配信しました。ピンクリボンに関する事だけでなく、がんに関する教育コンテンツの情報や、がんや両立支援に関する情報サイトのリンクを掲載し、従業員の意識向上をはかっています。

 

 

 

【3】コミュニティ

なし

 

【4】対外的な活動

がんに関する公的機関の委託事業等へ参画/がんに関する社会的な活動への協賛

 

がんに関する公的機関の委託事業等へ参画(がん対策推進企業アクションの推進パートナー企業)

がん対策推進企業アクションに推進パートナーとして参画しています。がん対策推進企業アクション作成の教育コンテンツを自社教育に活用しています。(上記【2】の<1>●がんに関するe-Learningの実施)

 

また、がん対策推進企業アクションの企業コンソ40に弊社保健師が1名参加しており、定期的に会議出席や研修に参加しています。がんに関する最新情報や他社の取り組みの情報を収集し、産業保健スタッフ間での共有を行っています。

 

 

【5】その他の風土・環境

■治療のために休業し、給与支給がない場合は傷病手当金や傷病見舞金、休業療養費補助(福祉共済会)が支給されます。

 

■休職及び欠勤・休暇から復職する際に、産業医が必要と判断し職場が同意したときには、「リハビリ勤務制度」により勤務時間の短縮や通勤に関する負荷軽減のための措置を受けられます。

 

■イントラにて仕事と治療のお役立ち情報を掲載。当事者向けに加え、上司・同僚向けの内容を公開している。

 

エピソード・思い

 

女性の健康増進をテーマに施策を検討した際、婦人科系がんに関するご講演を企画しましたが、「婦人科」としてしまうと、男性従業員が「自分には関係ない」や「女性のがんに関して、男性が教育受講しづらい」という意見がありました。

 

旭化成グループの健康経営は、従業員本人だけでなく、その家族も対象としています。男性社員も“他人事”ではなく、“自分の周囲の大切な人(女性)”に、がん検診受診の重要性や声掛けを積極的に行ってほしいというメッセージを教育コンテンツのPR文章に記載しました。

 

【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ

従業員と家族の心身健康保持・増進に関しては以前より取り組んできましたが、2020年10月に従来展開してきた健康保持・増進の取り組みをさらに発展させた「健康経営」を、「グループ健康経営ビジョン」を掲げて推進することを社長より宣言しました。

 

主要な健康経営目標の項目に「がん1件あたり休業日数」をKPIとして掲げ、健診や啓発を通し、がん罹患の予防のための施策を展開しています。

 

 

【2】他社の担当者への応援メッセージ

今後ますます、治療と仕事の両立支援の必要性が高まっていくと思われます。誰もが安心して働くことのできる環境の実現のために、一緒に頑張りましょう!

 

講評・コメント

 

「治療のための通院時間確保支援制度」を新設し、働きながら治療を続けることを支える制度を拡充されています。

 

研修や情報発信にも力を入れ、研修の受講率も高いことから、治療と就労の両立支援に関する会社全体の知識の底上げされていることが期待できます。

 

※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。

 

>>「がんアライアワード2023」受賞企業一覧はこちら

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