がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2023ゴールド】株式会社名古屋銀行の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2023ゴールド】株式会社名古屋銀行の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:株式会社名古屋銀行

業種:金融業

従業員数:1,846名

https://www.meigin.com/

働く人を支える制度・ 体制

 

【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明

健康経営宣言/がんアライ宣言/その他の宣言

 

★健康経営宣言

2018年に「名古屋銀行健康経営宣言」を、その後取締役頭取を健康経営最高責任者として、人材開発部が事務局となり、経営企画部、法人営業部、健康保険組合、診療所と連携し、組織横断的な健康経営推進室を2022年6月に設置。2023年にはホワイト500を取得し、プレスリリースにて社内外に周知。

 

★「がんアライ宣言」 

がんアライアワード2022応募時に宣言。同年にがんアライアワードゴールド受賞。プレスリリースにて社内外に表明。

 

★「イクメン企業宣言」「イクボス宣言」 を実施し、プレスリリースにて社内外に対して表明。

 

★「疾病短時間勤務制度 」 を導入し、プレスリリースにて社内外にて表明。

 

【2】休暇制度

傷病・病気休暇制度/傷病・病気休職制度/失効有休休暇積立制度/半日単位の有給休暇取得/時間単位の有給休暇取得/その他の休暇制度

 

★両立支援制度(保存休暇・欠勤・休職時の収入の保証)

保存有休休暇制度(年次有給休暇未消化分の積み立て保存制度)最大60日間→14日以上の加療休務の必要がある場合に利用できる。疾病欠勤は90営業日認められ、給与も支給対象。

 

疾病休職期間は勤務年数に応じて最大3年取得可能であり、休職中も勤務年数に応じて、一定期間5割~全額の給与支給がある。給与支給期間が終了すると、健康保険組合から傷病手当金及び付加金の支給があり、長期の療養にも対応している。また、1ヵ月以上の疾病休務者には見舞金を支給。

 

★連続休暇制度 

★時間単位有休休暇を1年度で2日間付与し、通院等に利用可能。

★半日有休休暇(年4日、8回まで)半日単位で休暇取得。

 

★看護休暇制度 

小学校に就学前の子供1人につき、年5日まで特別有給休暇1時間単位の取得も可能。

 

★介護休暇制度

要介護状態の対象家族がいる従業員は対象者1人につき特別有給休暇、年5日まで1時間単位の取得も可能。


★ワークライフバランス休暇

年間2日間有給休暇にて対応。


★産後パパ育休

5日までを有給にて対応、加えて保存有給休暇制度を5日間利用が可能。


★不妊治療へのケア

年10日までの保存有給休暇の利用が可能。

 

【3】勤務制度

時差出勤制度/在宅勤務(テレワーク)制度/短時間勤務制度/リハビリ出勤制度(復職後、休職前の勤務時間より短時間で勤務する等の制度) /カムバックに関する制度(離職した社員の再雇用に関する制度)/その他の勤務制度

 

★リハビリ勤務制度

産業医との復職面談時に体力や状況を確認しつつ、復職後最長3ヶ月間、勤務時間の調整(4時間又は6時間)及び業務負荷を調整する。フルタイム勤務へ移行するまでの間は定期的に産業医面談を実施。

 

★育児時短勤務制度

勤務時間を最大2.5時間短縮可能。また、これまで未就学児までであった利用制限を、小学校1年生の9月まで延長し、更に特別な事情が認められる場合は小学校3年生まで延長可能。

 

★再雇用制度(3年以上勤務した者)

 

★疾病短時間勤務制度

がん又はこれに準ずる疾病の罹患者で、原則最長1年を限度に、1~4時間の勤務 時間の短縮が可能(2023年7月新規導入)

 

★妊産婦短時間勤務制度

妊産婦において通勤緩和の措置等を主治医から指示された場合、短時間勤務が可能(2023年7月新規導入)

※主治医からの指示には個別対応していたものの、制度がない故に勤務先に言いにくい等の本人負担を考慮し制度化。

 

【4】支援体制

社員相談窓口の設置/保健師・産業医等の医療職の支援/外部医療機関との連携/外部支援サービス(EAP等)の活用/上司等との1on1、面談等の機会/人事担当者等との面談等の機会/主治医との書面上での情報連携/(休職を要さない場合)両立支援プランの策定・実行/休職中のフォロー/(休職した場合)職場復帰支援プランの策定・実行/復職後のフォロー

 

★全行員が、年に2回、自身の状況等をイントラネット上で回答した後、上司との面談を設けている。また、常時各支店の所属長は人事部門スタッフへ人事報告として即時に連絡を取り合える環境が整備されている。

 

★全従業員に対して、イントラネットや行員手帳で治療と仕事の両立支援の取り組みについて周知し、基本方針、相談窓口、手続きの流れについて掲載している。

 

★内科産業医他、カウンセラーや公認心理師の診療も行っており、本人に限らず、その上司が直接窓口に相談に来られたケースもある。

 

★健康保険組合が外部相談窓口として契約している「ベストドクターズサービス」は、フリーダイヤルで24時間医師が常駐しており、がんと診断された時の医師の紹介や、セカンドオピニオンの為の医師を案内してくれる。

 

★両立支援プランの策定・実行

様式はイントラネット上からダウンロード可能。本人が治療しながら就業することを希望している場合に、本人、人事、産業医でコミュニケーションしながら作成し、無理のないプランを策定している。

 

★休職中は定期的に産業保健スタッフが本人に連絡。人事担当者と保健師の3人で面談機会を設けている。

 

★両立支援コーディネーターが、人事部、診療所、健康保険組合にそれぞれ在籍し、相談窓口となっている。

 

【5】健康増進支援 

健康診断受診率増加に向けた取り組み/健康診断受診率100%達成/がん等の任意検診受診費用の補助/人間ドッグ費用の一部補助/健康診断で「要検査」となった人のサポート/必要に応じた産業医・保健師の面談/定期的な産業医・保健師との面談/禁煙に関する取り組み/日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)/健康増進イベントの開催/健康管理に関するアプリの配布/休憩室の整備  /その他健康増進支援

 

★2023年6月に「健康応援スポーツフェスタ」を参加者無料で実施。運動機会促進のため行員とその家族、取引先企業の従業員を含めた大型スポーツイベント。

 

★ウォーキングキャンペーンを全社で定期開催。2023年度は75周年企画とコラボし、全従業員の85.0%(2,070人)が参加。

 

★2023年よりパートタイマー(35歳以上)にも希望者には乳がん、子宮がんの健診を会社負担で実施。

 

★全支部店で年1回、保健師面談を実施。2023年から保健師2名から4名へと増員し、従員全員面談を実施。健康面・精神面での相談をいつでも受けられるようにしている。

 

★子宮頚がん健診を受診しづらい育休中の従業員に対しては、自宅で受診出来るHPVセルフチェック検査を希望者には配布しており、検査の重要性や検査キットについて産前説明会で保健師から周知している。

 

★社内だけでなく、取引先企業に対して、健康経営伴走コンサルを実施。当行の保健師が出張し、「禁煙について」や「女性の健康」等の項目ではがんについてのセミナーを開催している。その他にも生活習慣病、メンタルヘルスのセミナーを実施し健康増進を支援している。

 

★就業時間内の喫煙の禁止(2022年10月)。オンライン禁煙プログラムを健康保険組合が無償で提供。

 

★運動施設の利用補助

提携スポーツクラブの施設利用を500円/回で利用可能。

 

★人間ドック費用の一部補助

35歳以上の社員は、年に1回の人間ドックを一部会社負担で受けられるようにしている。

 

★毎年健康診断受診率は100% 

再検査受診率も90%以上を達成。毎年、再検査が必要な社員については、保健師から直接連絡、指導。それでも受診しなければ、人事部長より再検査の督促を入れている。

 

【6】その他の制度・体制

★がんと治療の両立支援ガイドブックを作成し、希望者には保健師・健康保険組合・人事スタッフとの面談を実施。顔を合わすことで相談しやすい関係づくりを心掛けている。また家族にもガイドブックをお渡しし、家族からの相談にもこたえている。

 

★カウンセリングルームの設置

従業員の相談にいつでものれる部屋を設置している。

 

★がんに罹患し、易感染状態の職員のいる部署はできるだけ、マスク着用をお願いし、感染予防に努めている。

 

働く人を支える風土、環境

 

【1】啓発、研修

社員向けのがんに関する研修/上長・管理職向けの両立支援に関する研修/女性向けのがんに関する研修/がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供/罹患者の体験談を聞く機会の提供/その他啓発、研修  

 

★女性の健康に関する研修

女性の健康課題の改善に関するオンライン研修(動画配信)を実施、産前・育休者に対して、子宮頚がん検診に関するセミナーを2カ月に1回、実施。HPV検査の実施についても説明。

 

★管理職に対するラインケア研修(全部店長向け)

「働く世代のがん対策講演会」を外部(愛知県保健医療局健康医務部健康対策課がん対策グループ)に依頼。外部講師を招き、理解を深める為のセミナーを開催。(2023年2月)

 

★人事部門スタッフ等の両立支援コーディネーターの取得を推進。現在は人事部長を始め5名が取得。

 

★社内イントラネットで、がんを含む健康に関する啓発動画を公開している。

 

★がん罹患者の内希望者には、保健師が仲介役となって他罹患者等の話を聞く機会を設けている。

 

【2】情報発信

イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信/社内報等での情報発信/両立支援に関するハンドブック・ガイドブックの配布/その他情報発信

 

★2023年厚生労働省主催・治療と仕事の両立支援オンライン地域セミナー(中部エリア)で弊社人事部長が登壇し、当行での取り組み事例をご紹介。

 

★『「がん」になっても働き続けられる職場づくりを目指して』を管理職に100部配布し啓蒙活動を行った。

 

★「がん治療と就労の両立支援制度ハンドブック」を作成。(ガイドブックはがんアライ部が作成したものを名古屋銀行オリジナルに修正)

 

★子宮頸がん受診率向上の為、産休前説明会時にセミナーを実施、ヘルスリテラシーの向上と子宮頸がん受診への敷居を低くし、年に1度の受診を促しています。

 

★全社員がアクセスできる社内イントラネットで、仕事と治療の両立支援制度について周知し、両立支援コーディネーターが人事部、診療所、健康保険組合に在籍し、それぞれが専門的な相談窓口となっている事を周知しています。

 

【3】コミュニティ

その他のコミュニティ

 

★個別に希望する場合は人事部門にて互いの了承を得て対応している。

 

【4】対外的な活動

がんに関する公的機関の委託事業等へ参画/がんに関する民間団体等への参画/がんに関するイベント・セミナー等への登壇

 

★令和4年度年厚生労働省主催「治療と職業生活の両立支援広報事業」オンライン地域セミナー取組事例発表・パネルディスカッションに(北陸・東海・中部・近畿エリア)で当社人事部長が登壇し、取り組み事例をご紹介しています

 

★2023年がん対策アクションに推進企業として登録。社内イントラネットで全職員に周知している。

 

★がんアライ宣言の実施

 

【5】その他の風土・環境

★対応力の向上の為、両立支援コーディネーターを診療所、健康保険組合、人事部に配置、コーディネーターの取得を推奨している。支援が必要なときに相談しやすい風土づくりにつながっている

 

★新たに人事部長が両立支援コーディネーターを取得 現在は5名となり、両立支援についての学びを深め、風土を醸成する取り組みをしている。

 

エピソード・思い

昨年がんアライアワードでゴールドを受賞。その後、制度を周知し、両立支援制度の周知と理解を促進する為に部店長に対し「がんと仕事の両立支援セミナー」を実施。がんの治療と仕事を両立する風土を構築した効果もあり、両立支援制度を利用の申し出が本人のみならず、所属長から保健師に直接相談される事が増えた。

 

その結果、今までは治療をしている事を隠すか、所属長のみに報告、有給消化のみで対応していたと思われるケースでも、報告、相談件数が増加。特に、乳がんでは主治医意見書や両立支援プランを作成し、放射線治療、抗がん剤治療を続けられるプランを作成。所属長、職場のスタッフと情報を共有しながら、仕事と治療を両立する社員が増加している。

 

昨年、すい臓がん、慢性リンパ性白血病、脳腫瘍といった高度治療を必要とする罹患者が複数名いた。治療の合間を見て働きたいという本人の意向と、現行のリハビリ勤務制度(最長3ヶ月)だけでは、治療と仕事の両立に対応できずに両立が困難になると判断。そこで、2023年7月より「疾病短時間勤務制度」を導入。原則最長1年は、1時間から4時間の勤務時間短縮制度を導入。退院後も無理なく、また治療と継続して勤務出来るように体制を構築した。

 

罹患者の中には、検査入院後、体調が良く、勤労意欲もあった為、主治医とも連携しリハビリ勤務及び短時間勤務にて復職。前向きな気持ちで就労を継続出来るようサポートを行った。緩和ケアへの移行後も定期的な連絡を取り、最後まで関わりを持ち続ける事で、いつでも復職できる環境と体制を整えていたが、逝去された。

 

ご家族からは治療を継続しながらの復職を認めていただいたことのお礼を繰り返しいただいたこと、生前本人からも会社で必要とされることの喜びを感謝されたこと、最後までがん罹患者とその家族に寄り添えたことは弊社におけるがん患者との両立支援について施策検討や心の持ち方、患者と罹患者家族の対話を進めていくうえでかけがえのない財産となった。

 

その他にも前立腺がん術後に、転移があった従業員は抗がん剤治療による入退院の繰り返しで体力の消耗も見受けられたため、出勤時には診療所、健康保険組合及び所属長とも常に連携を取り、フォローできる体制を整えた。こうした連携により勤務を継続することができ、今年定年退職を迎えられた。

 

現時点では「疾病短時間勤務制度」の利用実績はゼロだが、制度導入により、早期乳がんの様な比較的短期間の治療のがんだけでなく、長期に渡り、抗がん剤の治療が必要となる疾患や、ターミナルステージにも治療を継続しての勤務が可能となった。がんは治る病気になってきてはいるが、治らない事もある。そういった治らないケースや、以前と同じように働く事が出来ない人も含め、会社が受け入れる事が必要と考えている。

 

がんだけでなく、他の疾病や、治療が必要な人に対しても、同様に働き易い環境と風土の醸成をはかっていく事が大切だと考える。

 

【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ

現役世代で行員が数名がんに罹患。元々、休職制度は整っていたが、罹患者は休職を含む制度の十分な周知がされていなかったことや、相談窓口が分からず不安だったとの訴えが聞かれたこと。

 

また、術後、化学療法をしながらの復職された方に対して、周囲がどのように対応していいか分からないとの声が職場の上司から相談があった。その為、入院前から職場の上司と話し合いの場を持ち、本人の希望と現状を共有する場や、主治医や産業医からの意見を共有する事が必要であると感じた事がきっかけ。

 

【2】他社の担当者への応援メッセージ

もしもがんと診断された時は、上司に相談しやすい風土をつくる為には、トップが治療と仕事の両立支援を推進している事を出来るだけ多くの社員に発信してほしいと思います。特に役員の方は是非、県などが実施している勉強会の機会を設けていただけたらと思います。

 

トップが伝える事で、罹患した方からと上司からの相談件数が増え、相談しやすい風土を醸成する事ができたと感じています。
又、当行では産業保健スタッフだけではなく、人事部長含め人事部門スタッフが両立支援コーディネーターの資格を取得しています。

 

制度を整える上で、保健師や健康保険組合のスタッフだけではなく、人事部門が積極的に、両立支援を理解した上で社内の制度を構築することは、非常に大切なことだと考えています。

 

両立支援制度は、産業保健スタッフからの医療的な側面からと人事が行う社内制度の両輪が上手く回って初めて、多くの従業員が利用できる制度なのではないかと強く感じた1年でした。

 

がんに罹患した本人も、働くことが生きがいになっているということも大いにあると思います。保健師の立場で実際に見ていても、職場にご自身の居場所があることを大切にしている方は多いように思いますので、本人が仕事を続けたいと言うのであれば、何ができるのかを一緒に考えて頂けたらと思います。

 

講評・コメント

 

パートタイマーを含めた希望者に向けた特定のがん検診を会社負担にされるなど、雇用形態にとらわれない健康増進支援の取り組みは、多くの企業に参考にしてほしい施策です。


人事部長が両立支援コーディネーターになり5名体制となったり、「がん治療と就労の両立支援制度ハンドブック」を整えられたりと社内に向けた取り組みを充実させています。

 

それと同時に取引先企業に対しても健康経営伴走コンサルを実施されるなど、社外に向けた貴社ならでは取り組みも進められていて、がんアライの輪を着実に広げられています。

 

※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。

 

>>「がんアライアワード2023」受賞企業一覧はこちら

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