がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2022 ゴールド】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2022 ゴールド】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:大鵬薬品工業株式会社

業種:医薬品、医薬部外品、医療機器、食料品、日用品雑貨などの製造、 販売及び輸出入

従業員数:2,187名(2021年12月31日現在)

https://www.taiho.co.jp/

取り組みのきっかけ

 

弊社は抗がん剤を製造販売する生命関連企業であるため、がんやその他の病に罹患した社員を温かく支援する風土があり、2000年以前から既にがんに罹患した社員に対し個別対応を実施していた。国内でのがん患者の増加に伴い、2013年に就業規則を改定した頃から就労支援に力を入れ始め、2016年に東京都「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」受賞後、相談の充実、早期発見・予防対策の強化、支援ツール作製、社内外への発信等、運用の充実を図ってきた。

 

2019年1月に人事制度を刷新したが、①個々の働き方の多様性を勘案する ②がんばる社員に報いる ③大鵬の良き文化・強みを活かす の3点を掲げ、成長し続けるプロフェッショナルの育成を重視し、がんやその他の病気で治療中の社員も、やりがい、働きがいを感じながらキャリア形成が実現する仕組みになっている。

 

風土づくり

 

◆大鵬薬品は 「私たちは人びとの健康を高め 満ち足りた笑顔あふれる 社会づくりに貢献します。」という企業理念のもと、病を克服するために治療薬を希望する患者さんとご家族のために最善の治療を模索する医療関係者等、画期的な新薬を心待ちにする人びとの勇気となり、力となれるよう、各自業務に取り組んでいる。

 

◆2017年 「この企業理念を実現するために、社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働ける職場環境の整備に、組織全体で取り組むことを宣言します。」 と健康宣言を行った。社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働けることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考え、全社一丸となって健康増進活動を実施している。

 

◆会社にとって大切な「人財」である社員が、がんやその他の病気に罹患しても、離職することなく、治療しながら安心して働き続けられる職場をめざし、社内制度の充実、相談体制の整備、啓発活動、社員やその家族のQOL向上に努めている。

 

相談できる環境づくり

 

◆健康面、メンタル面のサポート

・産業看護職によるケアおよび復職後のフォローアップ

・産業医面談 (本人、産業医・看護職・人事)

・休職時、復職時に三者面談 (本人、主治医、会社側)

 

◆個別相談

・人事ヒアリング: 人事部担当者が、仕事の悩みや治療中の働き方等を直接聴き対応。

・自己申告制度: 会社への要望、個人的事情などを伝えたい場合、常時WEBで申請可能。

・キャリア相談室: 社内の産業カウンセラー、キャリアコンサルタント有資格者が対応。

 ・専門相談員によるヒアリング: 経験豊富な専門相談員が、部門単位で、全社員にヒアリングを実施。

 

◆その他

・人事部内に産業医、保健師、看護師、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター、がん治療と仕事の両立サポーターなどで構成する専門チームが必要に応じて対応している。

 

・病気に罹患した本人だけでなく、上司、同僚へのサポートも重視、必要であれば家族の看護・介護の相談も実施。

 

・がんやその他の病気に罹患した社員に対し、人事部担当者が適宜面談を行い、継続的なフォローを実施。病気回復後の社員にはキャリア相談などで今後の働き方について共に考え、支援をする。

 

・これまで実施していた対面相談や電話による相談に加え、メールやWEBを利用した相談を増やし、遠隔地にいる社員、時間制限のある社員等に対しても相談しやすい体制を整備。

 

・社内イントラネット以外でも、研修、部会など社員が大勢集まる機会に相談窓口を紹介し、社員への周知を図っている。

 

・全社員とそのご家族向けに健康経営に関するパンフレットを作成し、その中に「検診・人間ドック」や「治療と仕事の両立支援」を記載し、周知した。

 

制度

 

がんのみに特化した制度ではなく、その他の病気に罹患した際にも利用できる制度となっている。

 

◆半日有給休暇: 1年につき12日分を半分(24回分)に分割して取得可能。更に、産業医療職や就労サポーターを含む会議体で、治療計画書に基づき必要性を確認した場合、25回以上の半休取得も可能。

 

◆時間単位の有給休暇: 1時間単位の有給休暇を1年につき5日分取得可能。

 

◆積立有給休暇: 消滅する有給休暇のうち失効日を迎える度に10日分繰り越せ、最大50日積立可能。

 

業務外の私傷病(がんを含む)のため連続5日以上の休業を必要とする時に請求できる他、有休残日数が0日になった場合、定期通院時に利用可能。

 

◆カムバックパス制度: 結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤、私事都合による留学、がんや国が指定する難治性疾患の罹患等やむを得ない理由で退職した社員が3年以内に再雇用で復職可能とする制度。

 

◆休職制度:私傷病による休職の場合、休職前に有給(賞与は不支給)の欠勤期間が2カ月間あり、その後休職となる。

 

◆がん罹患者の休業期間延長・取得回数の制限をなくす: 休職中の社員は原則、復職後6ヵ月間の中で再度 同一事由で休職する場合の休職期間は 復職前の休職期間の残期間としているが、がんに罹患し復職した社員が6ヵ月経たないで再度がんで休職する場合、休職期間はリセットされ、欠勤から開始となる。

 

◆リモートワーク: 所属する事業場の勤務場所を離れ、自宅等で業務に従事。業務の効率・生産性の向上、通勤時間が省けることに伴う拘束時間の軽減と勤労意欲の向上、職場と住居の接近による社員の精神面のゆとりの創造を目的とする。

 

最低週1回は出社としているが、病気など特別な事由のため配慮が必要な場合や、コロナ禍等で環境への対応が必要な場合は、完全リモートワークとしている。また家族の介護などの理由で自宅以外の場所でのリモートワークも申請により実施可能。

 

◆フレックスタイム制: 10:00-15:00 をコアタイムとし、6:00-10:00 および 15:00-20:00 は出退勤時間を選択することが可能。

 

◆コース変更: 年に1回 転居を伴う異動のある「総合職」と、転居を伴う異動のない「地域限定総合職」双方向での変更の申し出ができ、子育て、介護、病気治療などその時々の状況に合わせた働き方ができる。

 

◆家族の介護: 家族が病気になり要介護状態になった場合、介護休業は法定を上回る366日まで取得可能。 

 

その他の取り組みやエピソード

 

◆広報と人事が共同で作成した、がんに関連した情報をまとめた社員向けの総合ポータルサイト 「C-Guide Portal」 には、がんをはじめ、病気になった際に役立つ情報、病気にならないための予防、早期発見に関する情報、社員の体験記、社内で実施したがんに関するイベント記録等が記載されている。

 

C-Guide Portal に関連したイベントでは、がんに罹患した社員、グループ会社社員のオンライン講演会を開催。患者として、また製薬会社の社員として、双方の視点からの実体験、その中での学びを話してもらった。身近な社員からの具体的な話は共感することが多く、また新たな気づきのきっかけとなり、参加者から大きな反響があった。

 

◆大鵬薬品のがん就労支援に対する取り組みを、これから活動を始めようとする企業に紹介したり、既に実践している企業や団体等と情報を共有し、社会全体の活性化に貢献するよう努めている。

 

社内の取り組み以外に、他社、健康関連団体、大学、大塚グループ内の他企業の衛生委員会での講演など普及活動を行い、既に治療と仕事の両立支援活動を実践している企業として、社会の様々な立場の方がもっと広く内容を理解し、新しい取り組みを始めるきっかけとなるような働きかけを実施。

 

2021年からは厚生労働省の「治療と職業生活の両立支援に関するガイドライン」作成委員会のメンバーとして、企業の立場から積極的に協力している。

 

◆社長による「2023年喫煙率ゼロ」宣言のもと、2020年から積極的な卒煙対策を実施。これまでも啓発活動を行ってきたが、がん領域を主要事業領域とする生命関連企業としての責任と自覚を持ち、全社員とその家族、周りの人びとの健康を守るため、オンライン禁煙外来・禁煙外来受診の費用補助をはじめ、喫煙と健康に関する情報、卒煙成功者の体験談を社内イントラネットで紹介、卒煙に成功した社員の座談会を実施し卒煙のコツを共有したりするなど、積極的な支援策を展開してきた。

 

新規採用においては非喫煙者であることを採用条件とし、非喫煙者であることを役職任命時の考慮要素の一つとしている。社内調査では、2020年の全社喫煙率は15%であったが、2021年9.2%、2022年5.6%と減少している(役員の喫煙率は0%)。禁煙補助剤購入費補助や保健師による保健指導、喫煙者全員ヒアリングといった新たな施策を実施し、2023年までの目標が達成できるよう取り組みを継続して進めている。

 

◆新型コロナウイルス禍における運動機会と社員間のコミュニケーション機会提供する目的で、2020年5月から約6週間にわたり毎日10分間の全社オンラインストレッチタイムを実施。2021年2月にはスマートフォン運動実行支援アプリを全社導入。5月に同アプリを活用した新しいスタイルの社内運動会を実施し、全社参加率は60%を超えた。

 

その後もスポーツ専門講師によるオンラインレッスンのライブ配信、2022年5月には同アプリを活用した2回目の社内運動会を開催し、社員が楽しみながら健康増進をはかる取り組みを実施した。

 

◆定期健康診断受診の徹底(100%実施)。その後、社内基準値を超える社員に対する受診勧奨及び受診後の結果確認、産業医による就業区分判定や就業制限基準に基づいた安全配慮の実施、対象者別の保健指導などを通して、健康管理意識の向上および健康管理を強化。2010年からは健康管理システムを導入し、全社員の経年データを一元管理している。

 

人間ドックの推進は、がんをはじめとした病気を自覚症状のない未病状態での早期発見・早期治療へつなげる重要な施策として位置づけ、社内イントラネットでは、年齢や性別ごとに重要な検査事項を示し、社員の受診動機につながる工夫をした。

 

また、定期健康診断として代用を認め就業時間中の受診を認めている。30歳以上の社員は、会社指定の期間に人間ドックを受診すると、6万円を上限に健康保険組合と会社の補助により無料としている。がん罹患のリスクが高まる40歳以上に対しては、受診率に目標値を定めて積極的な受診を促している。

 

また、歯の健康に関して、日々のホームケアの他、口腔ケアの定着として、定期的なスケーリングの機会につなげるため、歯科検診の費用補助を実施し受診を推進している。

 

◆2021年9月に本社が新社屋に移転した。新しい建物ではダイバーシティの面でもいくつか考慮した部分がある。気分が悪くなった社員のための休憩室にはベッドの他、リクライニングチェアを置き、また緊急時に連絡できるようブザーを設置するなどの点が加わった。がん患者への配慮の例として、誰でもトイレを設置しストーマへの対応が可能になった。

 

◆セルフケア教育・ラインケア教育を通じてメンタルヘルスケアの重要性について全社員に啓発し、マネジメント職層には資格試験を義務づけるなど、知識の普及や組織的な健康管理を図っている。相談を受ける側の人事部員も更なる研鑽に励み、両立支援コーディネーター、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、公認心理師等の資格取得者が年々増え、業務に役立てようと努力を続けている。

 

抱負

 

・治療と仕事の両立支援について、より多くの社員が理解し、必要な時に必要な支援を利用できるよう、様々な形での啓発活動の実施

 

・本人が病気に罹患した場合の支援だけでなく、上司、同僚の立場での支援体制の強化

 

・予防につながる教育、啓発活動

 

・社外(グループ企業、他企業・団体、学校等)との更なる協力と、社会への貢献

 

・がんと共生が当たり前になるように、社内・社外への発信(講演会や取材等)を継続して、普及していきたい。 それによる社内への再認識・周知にも期待したい

 

 講評・コメント

 

・2020年に「2023年喫煙率ゼロ」宣言をされ、禁煙補助剤購入費補助や保健師による保健指導、喫煙者全員ヒアリングといった新たな施策を行い着実に喫煙率を下げられています。

 

・全社員とそのご家族向けに健康経営に関するパンフレットに「検診・人間ドック」や「治療と仕事の両立支援」を記載し情報をわかりやすく届ける工夫をされています。

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