がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2022ゴールド】花王株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2022ゴールド】花王株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:花王株式会社

業種: 家庭用製品、化粧品、食品、工業用製品の製造、販売

従業員数: 8,508名(連結対象会社合計 33,507名) 2021年12月31日現在

https://www.kao.com/jp/

取り組みのきっかけ

 

・がん当事者の立場から、会社の制度はしっかりあるものの、その周知やソフト的な面で課題を感じることがありました。自身の経験から伝えられることがあるのではないかと考え、社内の同じ仲間と助け合うピアサポートの取り組みに向けて、少しずつではありますが準備を整えています。

 

・花王は生活に密着した商品をお届けする会社なので、様々な生活面をサポートすることでがん治療と仕事の両立にも貢献できることがあるのではないかと考えています。

 

・現在、社内外でも同じ志をもつ仲間も増えてきて、情報交換しつつ、共に取り組む活動の企画をおこなっております。

 

風土づくり

 

◆花王は2008年にトップメッセージとして花王グループ健康宣言をおこない、健康経営を推進、2021年には健康宣言をリニューアルし、健康支援の取り組みを、社員、家族、地域、生活者へ広げていくことを宣言しました。「健康づくり」6つの取り組み(1. 生活習慣病、2. メンタルヘルス、3. 禁煙、4. がん、5. 女性の健康6.シニア)を中心に健康づくり活動を推進しています。

 

・花王では、「ヘルスリテラシーの高い社員を増やす」ため、健康づくり活動の見える化をすすめ、PDCAサイクルを回しながら社員の健康度を上げていく「健康経営」に取り組んでいます。

 

・また、社員の健康に関するルールや情報を事業場の安全衛生委員会等やイントラネットを通じて、社員へ分かりやすくお知らせするとともに、社員が病気に罹患し、就業が困難となりうる場合は、まずは相談しようという(上司・人事・産業保健スタッフ)風土づくりを心がけています。

 

◆産業医が作成する「Kao Women‘s News」を、四半期に1回の頻度でイントラネットへ全社員に向け掲載。健康診断開始時期に合わせて、がん検診の大切さやセルフケア方法についての情報提供を行いました。

 

◆2007年から「花王グループ ピンクリボンキャンペーン」を実施しています。乳がんのみならず、ご自身や大切な人の健康を考えるきっかけとしていただきたいと考え、社内外に対して様々な活動を行っています。

 

<花王グループ ピンクリボンキャンペーン例>

・ピンクリボンやピンク色のものを身に着けた写真を投稿することで、1人につき50円を、キャンペーンが社員に代わり、がん教育プロジェクトに寄付する社内企画「ピンクリボンフォト募金」を2016年から実施しており、延べ6331人が参加してまいりました。世代、性別に関係なく誰でも広く参加できる企画ですので、これまでピンクリボンと関わりづらかった男性社員も多く参加しており、乳がんやピンクリボンについて語らいやすい風土づくりに繋がっています。

 

・「あなたと、あなたの大切な人のために」のスローガンに沿って、社員本人だけでなく家族と一緒に乳がんや健康について考えるきっかけとなることを目指し、社員の家族も一緒に参加できるオンラインセミナーを実施しました。乳がんを経験した講師による体験談や、産業医から花王グループの状況などを共有しました。

 

*:2022年現在での社内制度になります。

 

相談できる環境づくり

 

◆各事業場には健康相談室があり、産業医・看護職に社員が困ったことを相談できる体制を整えています。また、相談室専用のメールアドレスや女性の健康相談窓口等もあり、様々な方法で相談することが可能です。

 

◆また、社員が疾病を抱えながらも不安なく働き続けられるよう産業保健スタッフが定期的なフォローアップを実施するとともに、疾病を抱えながらの働き方について、上司、人事、産業医、看護即が本人と相談をしながら最適な働き方を共に考えています。

 

◆罹患後の社内のキャリアや仕事の悩みについては、社内カウンセラーに相談をしたり、こころの不安については、外部EAPに相談することもできます。

 

*:2022年現在での社内制度になります。

 

制度

 

◆がんの早期発見と早期治療のため、定期健康診断にがん検診項目があり、女性に関しては、乳がん・子宮がん検診も健診項目に含まれています。

 

・若年女性のがんの罹患もあることから、若年層からのがん検診も推奨しています。

 

・健康診断結果を受け、健康相談室からの二次検査の受診勧奨や再検査後のフォロー体制も充実しています。

 

◆がんを含む私傷病に対する支援として、有給の「私傷病特別休暇(勤続・年齢により20勤務日・40勤務日)」、家族の看護・介護対する支援として「看護・介護特別休暇(勤続・年齢により20勤務日・40勤務日)」が付与されており、入院や通院による治療のために利用することができるため、社員自身の治療(入院・通院)および、社員の家族の疾病等に伴う看護ケアに集中することが可能です。

 

◆年次有給休暇は、1日単位、半日単位(半日休暇)だけでなく、1時間単位(時間単位休暇)で取得することが出来るため、がんに罹患した際も、働きながら治療・通院ができ、フォローアップの診察等も定期的に受診が可能です。

 

◆出社と在宅勤務を組み合わせて働くことができます。在宅勤務は、各部門が設定する業務特性や組織運営上の利用上限の範囲内で、がんなどを含む私傷病の通院の場合にも、事由を問わず利用することができます。

 

◆月間フレックスタイム制を導入しているため、1ヶ月単位の変形労働時間制に基づき、1ヶ月の所定就業時間を変更することなく、1日の就業時間を延長又は短縮裁量で勤務時間を柔軟に決めることができるため、治療と仕事の両立がしやすい環境が整っています。

 

◆社員間の共済会からは、休業に伴い、見舞金が支給されます。

 

◆花王には、疾病や傷病により休暇・休職に入るときから復帰後の対応の流れを示した職場復帰ガイドラインがあり、本人の職場復帰に向けて、本人、上長、人事、産業看護職が、確認しあう体制が取られています。

 

◆健康保険組合からは、医療費が高額になった場合、一定の基準に基づいて計算した自己負担額の限度額を超えた場合、超えた額が「高額療養費」として支給されます。加えて、休業中に給料等の支給がない場合は、「傷病手当金・傷病手当付加金(給与の85%)」が支給されます。

 

*:2022年現在での社内制度になります。

 

その他の取り組みやエピソード

 

がんに罹患した経験から、もっと花王でもできることがあるのではないかと考え始め、社内外でもできる取り組みを仲間も増やしながら、少しずつ始めてきました。

 

◆“がんになっても動揺しない社会へ”を目指して活動する活動団体一般社団法人CancerXのオンラインイベントWorld Cancer Week2022において、運営ボランティア、協賛企業として参画しました。がんにまつわる様々な課題を、医・産・官・民・メディアなど様々な立場から多角的に議論する場づくりを行いました。

 

特に、「ライフデザイン」のテーマセッションでは、がんと就労を考える上で重要課題の一つのアピアランスケアについて、花王のこれまでの取り組みをご紹介し、脱毛などがん治療の副作用で生じるアピアランスに関わる課題について広く知っていただくこと、その対処法については個人の価値観に基づいて選択できる社会づくりの大切さについて議論しました。

 

◆AYA世代のがん経験者の団体アグタス(AYA GENERATION + group)さんと花王コラボ交流会を開催しました。コロナ禍で孤立しやすいなかで、思いや経験を共有できる仲間と出会える「場」づくりのイベントで、花王からは治療中の脱毛時にもお役立ちできる眉メイクや、乾燥しやすい爪まわりのお手入れ方法の体験を提供しました。

 

働きながら治療をされている方も多いAYA世代の皆さんは、悩みを共有できる仲間づくりや、治療で生じる症状との付き合い方の情報などは必要とされていることなので、他団体さんと協力して、誰もが働きながら治療しやすい社会づくりに貢献できるよう、活動を続けていきたいと考えています。

 

◆2018年より認定NPO法人乳房健康研究会主催のピンクリボンアドバイザーによるがん教育プロジェクトを支援しています。がんを経験したピンクリボンアドバイザーが外部講師として中学校・高校を訪問し、がんに関する基本的な知識やご自身のがんの体験談などを語るがん教育プロジェクト。がんへの正しい理解と、がん患者や家族への理解を深めることを通して、健康や命の大切さを学ぶ機会、さらにアドバイザー自身の体験を活かした活躍の場の提供にもつながっています。

 

がん教育を受けた生徒さんがご両親にがん検診を勧め、早期の乳がんが見つかりました、素晴らしい活動ですね、とのお礼のお声もいただきました。働く親世代の「がんと就労」が当たり前になる時代に向けて、がんを理解し、支え合える社会づくりには、子ども世代へのがん教育活動支援も不可欠と考えています。

 

◆花王ハートポケット倶楽部は、2004年に開始した花王グループ社員による社会的支援を目的としたクラブ組織です。クラブの趣旨に賛同する社員が会員となり、毎月の給与から任意の金額を積み立て、よりよい社会づくりをめざし、社会課題の解決に取り組む活動に役立てています。

 

◆LGBTに関する社員の理解のためにも、e-ラーニングや研修を実施、多目的トイレの表示整備やLGBTアライの表明活動をし、疾病だけでなく多様な社員とインクルーシブに働いています。

 

また、花王グループの聴覚に障がいをもつ社員と聴者の社員が、有志で「KAKEHASHI(かけはし)」社内コミュニティを立ち上げ、職場や生活の場で聴こえない・聴こえにくいことで生じる課題共有や課題解決に向けた取り組みを行っています。多様な社員が集うコミュニティで活動を行うことで、がんと就労にも不可欠な相互理解を促す風土づくりにチャレンジしています。

 

抱負

 

・社内のがん経験者の声も反映した「花王版がんと就労のハンドブック」を作成したいです!

 

・社内ピアサポートを設立していきたいです!

 

・がん経験者向けアピアランスケアに関する社内イベントを開催したいと思っています。

 

講評・コメント

 

・ ピンクリボンキャンペーンとして、社員本人だけでなく社員の家族も一緒に参加できるオンラインセミナーの実施し、自分や家族の健康について考える機会を提供されています。

 

・一般社団法人CancerX のオンラインイベントに運営ボランティア、協賛企業として参画し、がんと就労を考える上で重要課題の一つのアピアランスケアについて、これまでの取り組みをご紹介など社会全体に対して啓発活動を進められています。

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