がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2022シルバー】株式会社朝日新聞社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2022シルバー】株式会社朝日新聞社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

 がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

シルバー受賞:株式会社朝日新聞社

業種: 情報通信業

従業員数: 4,188名

https://www.asahi.com/corporate/

 

取り組みのきっかけ

 

2016年度にがんとの共生社会をめざす「ネクストリボンプロジェクト」を社内で立ち上げ、17年度に朝日新聞社創刊140周年事業に認定されたことを受けて、社内横断チームが発足。これまで新聞紙面やウェブで「がんとともに」の タイトルでキャンペーン記事を掲載 し、世界対がんデーの2月4日には紙面での多ページ展開やイベント開催をしてきた。社会への啓発活動を進める中、社内横断チームメンバーから「社内の対策はどうなっているのか?」との声があがり、これをきっかけに18年に有志による社内がん対策チーム「リボン隊」を結成した。現在のメンバーは13人。

 

「リボン隊」メンバーは取締役(総務・人材政策統括/管理・労務/コンプライアンス担当)をリーダーに、記者部門、営業部門、労務・人事・健康管理部門、健康保険組合などの複数部門からなり、それぞれの経験や専門性を活かし、がんの早期発見に向けて関係各部署を巻き込みながら情報発信、啓発に力を入れている。

 

風土づくり

 

◆病気治療のために会社を長期間休む必要が生じたり、治療をしながら仕事を続けたりすることは誰にでも起こり得る前提に立ち、万が一、長期の休みや治療が必要になった場合でも安心して治療に専念し、また安心して治療と仕事の両立がはかれるよう、「仕事と治療の両立支援ハンドブック」を作成し、全社員にメール送信して、広く周知している。

 

◆がんは国民の2人に1人が罹患すること、非常に身近な疾患であること、治療を続けながら仕事を続ける方が多いこと、男性では45歳頃、女性では35歳頃からリスクが上がり始めることなどから、早期発見、早期治療のために、充実した朝日新聞健康保険組合の人間ドックやがん検診の制度利用を定期健康診断のタイミングと合わせて社員に推奨している。また、人間ドックについては受診のための休暇や定期健診の代用を認めており、これらはすでに社員に浸透している。

 

◆有志によるメンバーによりがん啓発活動を実施。健康保険組合とも協働し、社内のがん罹患状況の共有、がん検診の推奨や体験談をメルマガとして全社員にメール配信している。

 

◆「がん征圧月間」に行われる「がん征圧全国大会」の出席報告に合わせて、毎年社長が人間ドックやがん検診受診の重要性について、社員にメッセージを発信している。

 

◆自身の健康より、つい仕事や家庭を優先しがちな女性社員に向けて、乳がん・子宮頸がんなどの女性に増えている病気や、必要な健診について学ぶ「あなたの知らない”わたし“のカラダ」と題した健保組合主催のWebセミナーを積極的に社内でも告知し、女性だけでなく男性社員にも広く参加を呼びかけた。

 

◆スライド勤務や短時間勤務制度といった勤務制度や、半日休制度などの休暇制度、休職制度などを充実させて、治療と仕事の両立支援に取り組んでおり、がんに限らず病気を抱えながら働く社員の実情に合わせて勤務したり、休暇を取得したりできる。

 

相談できる環境づくり

 

◆全国の本支社に配置している産業医9名と、保健師12名に、健康相談ができる。

 

治療や勤務に関する外部医療機関からの情報収集は産業医が行い、就労上必要な配慮がなされるよう定期的な体調確認を行っている。

 

◆東京本社および大阪本社の社内診療所では、大学病院をはじめ地域の拠点病院から派遣された消化器、内分泌、循環器、皮膚科、心療科などの専門医が診療を行っており、相談や専門病院への紹介ができる。

 

◆がんに限らず病気を抱えながら働く社員の実情に合わせた勤務について、人事部や労務部、健康管理部門、所属長、産業医、保健師が連携してサポートをする環境がある。

 

◆朝日新聞健康保険組合が契約する保健同人社の「からだとこころの健康相談」サービスを、扶養家族まで含めて24時間365日(からだの相談時間)利用できるため、健康情報とともに相談窓口として案内している。

 

制度

 

◆健康増進

・社員の健康増進推進のために、朝日新聞社の健康課題と2025年までの改善目標を定めた「アクティブヘルスプラン2025」を策定。健康診断受診率100%や人間ドック受診率70%、メタボ者の割合を3ポイント減らすことなどを目標に様々な取り組みを行っている。

 

・健康診断の結果などをもとにした社員の健康に関する様々なデータを集計・分析した健康レポートを毎年作成し、社員に公開している。がんに関しては、年齢別罹患者数、罹患最多部位、男女・部位別がん検診受診率を集計・分析している。

 

・健康保険組合とのコラボヘルスを強化し、各保健事業を積極的に活用している。

 

・がん予防にもつながる生活習慣の改善として、健保で行われるウォーキング事業や禁煙支援事業への参加を勧奨している。特に喫煙については「朝日新聞社禁煙ポリシー」を策定。すでに喫煙率は低減しているが(21年春集計12.3%)、さらに2017年春の15.6%を半減させることを目標に喫煙、禁煙対策に取り組んでいる。

 

・がんのリスク因子となる「飲酒習慣」に着目し、2025年までに「リスク飲酒率の半減」を目標に飲酒対策に取り組みを開始。この春よりAUDITを実施し、結果のフィードバックとともに情報提供を行っている。体格差や女性ホルモンの関係で、女性は男性より少ない飲酒量と飲酒期間でアルコールの害を受けやすいことなどから、特に女性のリスク飲酒低減に向けて取り組んでいる。

 

◆がんを早期発見するための取り組み

・年2回の定期健康診断の機会を利用したり、リボン隊(がん啓発チーム)による人間ドック受診勧奨を随時実施している。

 

・朝日新聞健保組合のがん検診制度を積極的に活用している。

-2021年度の人間ドック受診率は64.4%。70%受診を目指す。

-満40歳以上の社員は年に1回人間ドックを原則無料で受けられる。

-女性のがん検診(子宮頸部細胞診、乳がん(マンモおよびエコー)検診)は、満20歳以上、原則無料

-肺がん検診(CTなど)、大腸がん検診(大腸内視鏡検査)は7割補助。(上限額、一部指定年齢あり)

-大腸がん郵送検診(郵送検診)は満30歳以上、自己負担なし

 

◆がんなどの病気に罹患した際、治療を支援する制度や復職時に働きやすい制度

・勤続年数に応じた最長1年の病欠制度や、最長4年の傷病休職制度がある。

 

・がんに罹患した際に治療を支援するためや、復職後に無理なく働けるように、一日当たりの所定労働時間や、1週間の働く日数を減らすことのできる短時間勤務制度がある。

 

・上記のほかにも、スライド勤務や、半日休制度などの休暇制度、休職制度、在宅勤務制度などが充実しており、実情に合わせて勤務したり、休暇を取得したりできる。

 

・健康保険組合の「高額療養費」、「付加給付制度」、「入院時食事療養費」、「傷病手当金」などの各種補助制度が利用できる。

 

・共済会の「傷病見舞金」、「差額ベッド利用料補助」、「無給休業貸付」などの各種給付制度が利用できる。

 

その他の取り組みやエピソード

 

◆社内がん対策チーム「リボン隊」は、①がんで社員を死なせない②本人、家族ががんになってもあたり前に働ける会社にする―をミッションに掲げ、人事部や健康管理部門、健康保険組合と連携しながら、がんに関係する様々な情報発信や、社内のがん経験者のインタビュー、がんやがん対策に関する社内意識調査を行うようになった。部下ががんになった場合の対応についての管理職研修も開催するようになり、19年と21年に実施した(今年度も実施を検討している)。メンバーは、それぞれ所属部署の「健康委員」にもなり、所属部門内で、がん検診率向上のための活動を精力的に行っている。 

 

◆リボン隊が発信するメルマガは大きく分けて、がんサバイバーでもある社員のインタビュー記事と、社内制度の紹介記事だが、両方ともがんの早期発見の重要性を伝えることを目的に定期的に全社員に向けて発信している。特にインタビュー記事については、メルマガと同じコンテンツを広報部門とも協力し、全社員向けのポータルサイトの目立つ場所に社員本人の写真付きで掲載するなど、より多くの社員が他人事ではなく、自分のことに置き換えて読んでもらえる工夫しており、かなりのページビューを記録(直近のインタビュー記事は1,700以上のページビュー)している。

 

◆2022年のメルマガ配信実績(タイトルと全社員宛メール配信日) 

・「人間ドック受けていれば」 健康に自信あった私、まさかの希少がんに(社員インタビュー)10/11

 

・40代で100万人に1人のがん、不条理と向き合い見えたもの(社員インタビュー)7/14

 

・同じ部署の交際相手(30)に突然の告知 痛感した無力さ、入籍し通って支える日々(社員インタビュー)5/10

 

・がん検診 受けてますか(制度案内)3/25

 

・人間ドックで胃がんが判明!救われた会社の制度、がん経験者の友達から受け取る勇気 【社員インタビュー】1/25

  

抱負

 

朝日新聞社は、1958年に「日本対がん協会」の立ち上げを支援するなど、がんと、その予防についての正しい知識と早期発見、早期治療の普及に貢献してきました。この活動に深く関与してきた経験をもとに、社内での活動をすすめています。2018年発足したリボン隊を中心に社内の各部署が協力して、より多くの社員ががんの早期発見、早期治療につながる活動の場を広げていきたいと考えています。

 

また、リモートワークを含め多様な働き方が進んでいく中、治療と就労の両立を目指して働きやすい環境についても現場目線で提案していければと考えています。

 

リボン隊のメルマガを読んだ社員からの感想や、ポータルサイトのページビュー数を通じて、がんの早期発見、早期治療につながる活動や、健診に興味を持つ社員が増えている実感がある。自分のがんの体験や早期発見の必要性を伝えたいと自ら加入を申し出る仲間が加わるなど、活動の幅や社内での認知度も上がっている。今後もさらに活動を続け、仲間を増やしながら全社的なコミュニケーションの活性化につなげていきたい。

 

講評・コメント

 

・毎年社長から人間ドックやがん検診受診の重要性について、社員にメッセージ発信や、社員の健康に関する様々なデータを集計・分析した健康レポートを社員に公開など、健康に関する意識付けを強化されています。


・喫煙については「朝日新聞社禁煙ポリシー」を策定され、着実に喫煙率は低減されており、目標値達成を期待しております。

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