がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2020 ゴールド】コロプラスト株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2020 ゴールド】コロプラスト株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

20202月より全社規模で在宅勤務実施のため、2019度「がんアライ宣言」写真を再掲)

がんアライアワード2020に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:コロプラスト株式会社

事業内容:医療機器、装具の輸入、販売

従業員数:約170人

ウェブサイト:https://www.coloplast.co.jp/

取り組みのきっかけやエピソード

 

・がんアライ部に参加したことを契機に他企業の取り組みからも刺激を受け、自社制度のさらなる拡充に取り組んでいる(短時間勤務制度、がん検診サポート、禁煙サポート)。

 

・(2019年)がんアライ部勉強会「がん治療中の部下と上司の良い関係」に経営会議メンバー3名が参加し、両立を支援する環境作りの大切さについて理解を深めた。社内イントラネットでも報告し、感想と共にがんアライ部事務局による勉強会レポートを共有した。

 

・(2019年)第1回「がんアライ宣言・アワード」ゴールド受賞後、がんアライ部Webサイト「受賞企業に聞く『がんアライアワード受賞』の効果」にてコロプラストのご紹介をいただくことになり、社内で募ったところ、多くのコメントが寄せられた。「お客様や友人に社内の取り組みについて説明することができた」「誇らしく思った」等、受賞の喜びを一緒に分かち合うこととなった。

 

・2020年1月日立システムズ社の金森さつきさんと共に がんアライ部 第7回勉強会にて取組み事例について発表させていただいた。これを契機にさらに他企業の方とも交流が深まり、施策作りや留意点について意見交換する機会に恵まれた。

 

◆実際に社員が罹患した際の対応・エピソード

・がんアライ活動前にがんに罹患した社員が2名いたが、いずれも体調に合わせて業務内容を調整する相談をしており、安心して治療を継続できる環境を確保した。

(本人の希望を汲んで職住接近の業務に配置転換/雇用の心配は無用であることを念押し/社会保険等に関してタイムリーな情報提供と手続き/本人の希望に基づき会社PCを接続使用して上司や同僚、人事部とやり取り/本人の希望に基づき復職後の体力回復に合わせた段階的な業務変更計画に合意/定期的に入院先に通い、精神面も含めてできる限りサポート/等)

残念ながら両名とも在職中に亡くなったが、その際はご遺族の気持ちに寄り添いながら丁寧に対応することを心掛け、グループ保険や退職金等の手続きも迅速に行った。

・がんアライ活動開始後にも社員の罹患が判明したが、会社の日頃の姿勢を知ってくれていたため、安心して相談してもらうことができた。マネジャーも当該社員の心身の安定を最優先に、復帰後も支援的な対応を継続した。

 

◆その他

・コロプラストはデンマークを本社とする医療用装具・治療材料メーカーで、「個人的な健康上のニーズをお持ちの方々の生活をより快適に」をミッションに活動しています。社員はバリュー「Closeness(寄り添う気持ち)、Passion(情熱)、Respect and responsibility(尊重と責任感)」を体現することが期待されています。

 

・コロプラスト製品をお使いくださるお客様にはがんを経験されている方も多くいらっしゃいます(ストーマ装具をお使いの方の大半が大腸がん罹患者)。このため、社員のがんに対する理解も進んでおり、温かい気持ちを持っています。オストメイト(ストーマをお持ちの方)の方々との交流も続けています。

 

風土づくり

 

◆すぐに会社を辞めなくていいと伝わる風土づくり

・これまでがんに罹患した社員について「辞めなければならない」等の選択肢は本人からも周りからも一切出たことがなく、過去の事例の積み重ねが「すぐに会社を辞めなくていい」社風となっている。

 

・がん検診補助、短時間勤務制度等、新制度を導入する際は、「社員が安心して働き続けられるよう制度や職場環境の整備を促進――」「各種治療や業務との両立――」等、社員に趣旨を理解してもらえるよう付記している。

 

・がんアライに関するこれまでの取り組み(制度や活動)をまとめてイントラネットに掲載した。この中でも「がんになっても安心して働けるよう環境整備を続ける」を伝えている。社員からも「家族から『サポートしてもらえる環境があって心強い会社だと思う』と言ってもらえた」等の感想が寄せられた。

 

・多様なバックグラウンドを持つ社員がいきいきと力を発揮できるインクルーシブな職場環境を作ることの大切さについて、各種施策や研修等の機会に経営層から伝えている。2020年10月には経営会議メンバーがハラスメント防止研修「一人ひとりが尊重される職場をつくる」のファシリテーターを務め、全社員を対象に実施した。あらゆる場でのメッセージの積み重ねが意識の醸成や風土づくりに繋がっている。

 

◆制度が使いやすい風土づくり

・継続的に年次有給休暇取得率を上げる活動に取り組んでおり(年次有給休暇計画付与/部門長による働き掛け/有休取得率推移イントラネット掲載/等)、安心して休暇を取得できる社風がある。毎年有休取得率は6割を超えている。

 

・健康診断受診をサポートするための費用、休暇等の案内を毎年3月下旬にEメールで発信しており、5月末までに全員が受診完了できるよう取り組んでいる。未受診者には上司も巻き込んで催促、過去10年以上健康診断受診率100%を維持している。健診結果には産業医が目を通し、必要な場合はフォロー面談を実施している。(2020年度については、コロナ禍のため9月末までを目安とし、その後も個別事情を勘案しながら対応中。)

 

・2019年度より「がん検診費用サポート」制度を開始(詳細は【制度】欄)。上記健康診断案内に盛り込むと共に、上司に部下全員ががん検診 を受け、精算していることを確認するよう依頼。 2020年度はコロナ禍でも利用者が増えた。

 

・休職・復職の規定や申請書、社内問い合わせ先を社内イントラネットに掲載。

 

相談できる環境づくり

 

◆上司に仕事や治療のことを相談できる環境

・上司‐部下間のコミュニケーションは、「1on1」や日常的な対話の中で相談しやすい環境が整っている。

 

・パフォーマンスマネジメントシステムの中にも本人が望む今後のキャリアの方向性について記入する欄があり、面談の中でも働き方に対する希望を話題にしやすい仕組みがある。

 

◆人事担当が外部の医療従事者と相談する環境

・産業医とよく連携が取れており、毎月の訪問時(コロナ禍以降オンライン)に人事部が社員の健康に関して相談をしている。

 

・社員が病気に罹患した際は(がんに限らず)、よりよい就業環境を確保するため、必要に応じ、本人の同意の下、上司と人事部が主治医を訪問し、相談することもある。

 

◆その他

・社員の健康のための年次有給休暇取得率向上や残業時間の抑制に経営層が一体となって長期的に取り組んでいる。ワークライフバランスや風通しのよいコミュニケーションを重視した職場づくりのため、何かあったら上司や人事部に相談する環境ができている。

 

・産業医訪問スケジュールや個別健康相談の申込み方法を社内イントラネットに掲載。年に数回、産業医ミニレクチャーを企画、社員と産業医との接点を設けることによって、相談しやすい環境を維持している。

 

度・配慮

 

◆社員の健康増進やがんを早期発見するための取り組み

・15年以上前から健診受診時に発生する「一部負担金」を会社がサポート。検診機関窓口で各自が支払った後、社内経費精算できる仕組みを設けている(定期健診1,620円、生活習慣病3,240円、日帰人間ドック21,600円)。

 

・人間ドックを含む定期健診および再検査(1回まで)に必要とする時間を特別有給休暇扱いとしている。

 

・上記については全直雇用社員(正社員・準社員)を対象とし、毎年3月下旬にEメールで案内している(受診期間目安:4月1日~5月末/2020年度については、コロナ禍のため9月末まで延長)。

 

・経営陣が時間外勤務時間を毎月モニターしており、継続的に残業時間を削減する活動に取り組んでいる(業務分析・プロセス改善/配置転換/等)。第1回目のがんアライアワード応募時(2018年9月)の過去5年間 残業時間は41%減少 (時間管理対象者 月平均残業時間 7.1時間→4.2時間/最長月間平日残業 67時間→41時間)。さらに2019年以降は「月平均3.5時間以下、最長35時間以下」を維持している。

 

・がんの早期発見を後押しするため、 2019年度より「がん検診費用サポート」制度を開始。全直雇用社員(正社員・準社員)を対象に年5,000円まで会社負担。若年でもがんに罹患する可能性があるため、年齢制限は設けていない。制度開始にあたっては、がん検診に関する情報提供のため、「がんと検診」「女性特有のがん」をテーマに産業医によるミニレクチャーを実施し、当日の動画記録をイントラネットで共有した。

 

・がんの一因と言われる喫煙習慣を断つ支援をするため、世界禁煙デーに合わせた「卒煙ダービー」を企画したが、残念ながら不発に終わった。再度、経営会議で討議し、禁煙外来費用を一部補助することを決定。一人につき1回10,000円まで経費精算可能とした。2020年には利用者も出て、「禁煙治療は高い印象があったが、会社の支援があったからトライできた」と好評を得た。

 

がんに罹患した際、治療を支援する制度や復職時に働きやすい制度

・フレックスタイム制度、変則勤務(1日単位)に加え、2018年に在宅勤務制度を導入。柔軟な働き方の選択肢を増やした。

 

・2018年に過去育児・介護中の社員のみに適用されていた短時間勤務制度を、がんに罹患した社員も治療や休養に使えるよう制度改定した。

 

・2019年に臨床心理士をはじめとする外部専門家によるカウンセリングサービスを開始。健康に関する悩みに保健師が対応する健康相談メールもメニューに含んでいる。

 

いざという時に利用しやすいよう、カウンセラーの方によるオンラインミニレクチャーを企画し、社員との接点を設けた(2020年4月、5月「不確実な状況をしなやかに乗り切るマインドセット」基礎編、実践編」)。
また、2020年入社者には入社直後に利用を促し、何かあった時の相談先の一つとして認知してもらった。「カウンセリングのイメージが持てた」等の感想を得ることができた。

 

◆「がんと就労」における課題に対して取り組みを進めていること

・がんの治療と就労の両立を支援するため、年次有給休暇の時間単位取得について経営会議で合意し、具体的な規程整備と勤怠管理システムの準備を進めている(システム仕様継続討議のため延期が続いていたが、2021年1月導入に向けてシステム会社と本格的に準備中)。

 

新型コロナウィルスの感染拡大による影響に応じて新しく始めた「がんと就労」の取り組み等に関するエピソード

 

・オンライン化が加速したため、産業医の定期訪問もバーチャルとなり、罹患社員との面談も携帯電話等を通じて在宅のまま可能となった。上司や人事部とのコミュニケーションも安全かつ効率的に図れるようになった。

 

・在宅勤務制度の適用拡大と長期化は、がんに罹患した社員のみならず、育児や介護をはじめとする多様な課題を持つ社員の両立支援を促進することとなった。在宅勤務下でも効率的、効果的に成果を出せることが実証されたため、コロナ収束後も柔軟な働き方がより選択しやすくなる動きである。

 

講評・コメント

 

「残念ながら不発に終わった」といわれていた卒煙ダービーを進歩させて禁煙への取組みをスタートされてます。禁煙への取組みはステークホルダーの巻き込みが簡単ではなく、対応に苦慮している企業も少なくありません。トライアンドエラーを続ける貴社の取り組みは、他の企業にとって大いに参考になるものです。

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